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海里-kairi-
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金魚
夏祭りが終わり、ロビーでなにか賑やかな声が聞こえる。 「お祭り行ってきたのか?」 「お!ヨタカさん!!そうなんですよ!見て下さい!オレ金魚すくいで取れたんすよ!」 「金魚!」 嬉しそうに、褒めて欲しいと目の前に差し出された小さなビニールの巾着の中には、透明の水の中に揺られながら赤い紅い赤い金魚がた揺らいでいた。 見覚えのある金魚だった。あの金魚とは違う金魚だって知ってる。のに、寒気がした。 俺は知ってる。その金魚は鱗も赤ければ血も紅い事を。俺はその味を…… 「ヨタカさん?」 「っ!?」名前を呼ばれて気がついた。手に冷や汗を握っていた。額にも汗が少し流れた。 「うっわ!すげー汗じゃん!大丈夫ですか!?」 「ああ……大丈夫……少し疲れたみたいだから今日は部屋に戻るよ……」 「無理しないでくださいね。お大事に」 「ああ…ありがとう…おやすみ」 静かに部屋の扉を閉めた。足は自然とベットに向かって音もなくベットに身体が沈んだ。 目を閉じた。遠くから、風鈴の音、蝉の鳴き声、おかあさんおかあさんってつぶやく声が聞こえた。 幼い頃の夏が見えた。 夏の暑い昼下がり。 木造でお世辞にも良い建物とは言えないアパートの一室に子どもが一人いた。部屋は最後にいつ掃除したのか分からない程ゴミが散乱し積み立てられていた。 部屋にいた子どもは一週間もろくにご飯を食べてないのか、身体は骨が浮き出るほど痩せていて、頬はこけていた。虚ろな目で青い空を見上げていた。 「おかあさん……いつ、帰ってくるの…かな……おなか、へった……」 そう。少年はただ母の帰りを待ってただけである。母親は一週間も家に帰ってきてないのであろう。 「ごはん……もう、ない……どうしよ……」 事前に置かれていた一週間分あったのか分からないパンなどの食料が底をついたのだろう。ゴミの殆どが菓子パンや総菜パンであった。 蝉が五月蝿く鳴く。部屋はもうサウナの様な蒸し暑さだ。頭がは足らなくなった。ここで死ぬのだろうかと、ふと考えた時。 風が風鈴の音を鳴らしながら部屋に入り込んだ。久し振りに感じた涼しさに当てられ、ある一つの物に目に着いた。 それは、ゴミだらけで蒸し暑い部屋の中に一点だけ涼しさを感じる様な金魚鉢だった。金魚鉢の中には、日に照らされ少し濁っている水ではあるがきらめいて見える水の中に優雅に泳ぐ赤い金魚の姿があった。 見て思った。アレを食べよう。食べたい。お腹空いた。今あれを食べなきゃ死んでしまう。食べなきゃ。 既にその子供の頭の中は生存欲求が頭の中を占めていた。実際に今。あの金魚を食べなければ空腹で死んでしまう生命の限界ギリギリに迫られていた。 だが、子供の頭の中では逆に葛藤も起こっていた。食べたい欲と、夜の縁日、出店と提灯の赤い光に浴衣を着て子どもと笑顔で手を繋いでいる、母の笑顔がーーー… ちらついた。 そう。あの金魚は、唯一母が近所の縁日に連れて行って初めて金魚をすくって取ったものである。それを食べようとしてるのだ。自分と優しかった笑顔のあった母を裏切るのかと。 しかし、鬼の様に恐ろしく怖い顔をする母の顔が横切った。無意識に手が金魚に向かう。 もう、あの優しい母はいない。なら。ならば。今その思い出ごと食べて。食べて食べて食べなければ…いけない気がした。 手首からほっそりと骨が浮かんでる手を水槽の中に入れた。生ぬるい水が子どもの手を冷やした。 既に弱って抵抗もない金魚を掴んだ。もしかしたら、死ぬ瀬戸際だったかもしれない赤い金魚。 両手で金魚を包み込むように取り出した。小さい掌で今にも死にそうに口をはくはくと呼吸をしている金魚を見つめる。 外では、蝉の泣く声が響く。風はもう吹いてこなかった。 恐る恐るながらも、金魚を口にもっていく。 ぐちゃ。 「っ…!!!!」 飛び起きた。呼吸は既に乱れていた。体は冷や汗で濡れていた。 夜風が風鈴を鳴らしながら入って来た。 あの、金魚を食べた日の様に。
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Heart
あとがき
初めてに近く久しぶりに小説書きました。ご覧の通りにヨタカの幼少期の虐待に関するお話です。ヨタカは優しかった母親が大好きでした。けどもうその母親はいない。いるのは怖い母親だけです。思い出事食べたお話です
Hearts
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海里-kairi-
描きたい時に描いてきます。
マイコン/東京異端審問/シェアハウス/手紙の国/星座擬人化/など……
今、Twitterにほぼいます。生存確認等はそちらを
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