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かみさまのはなし
「サジ、貴方は神を信じますか」 涼やかな声で名を呼ばれ、独り言のように零された言葉に目を瞬く。 振り返った先、慣れた様子で深い闇色のベールを被り直す修道者の姿に。く、と笑みを含んで喉が鳴った。 「…宗教勧誘かい?」 「いいえ。純粋な好奇心です」 茶化すように言えば、すっかり宵闇に覆われたその下、伺えない色の違う瞳がひたりとこちらを向いた気がした。 隠されているにも関わらずじいと見つめる視線を感じて肩を竦める。 「そうか。まあ、そうだな…お察しの通り、とでも言っとくか」 「…信じていらっしゃらないと」 「んん、まあ、信じたところでどうなるのかっていう気持ちの方が強いかな」 神の信奉者たる彼の前で言うことではないかもしれないが、勧誘ではないと言ったのは彼自身なので良いだろう。 それでも気分を害したかと思ってちらりと伺うが、やはり表情まではうかがい知ることができなかった。 顔の異形化を隠すためとはいえ、やはりあれは邪魔だなあなにかいいものがなかったかなと思いつつそういえば彼の説教を聞いたことがないなとふと思う。そして同時に、ここがなにを祀る教会なのかも、聞いたことがないことを思い出した。 「…そういえば、ここってさ」 「はい?」 「なんの神様を祀ってるの? あ、単純に興味があるだけで入信するつもりはないです」 「はは、大丈夫ですよ、勧誘はしてませんから」 笑い声からあんまりにもやる気を感じられなくて思わず彼を見たが、肩を震わせる姿を思うに本当に笑っているようだった。常から抑揚のない話し方ではあるが、笑い声まで温度が変わらないなんてあるのか。 ひとしきり笑って震える背中を落ち着かせた彼が、変わらない静かな声音で言う。 「かみさまです」 「うん」 「かみさま、です」 「…うん?」 思わず首を傾げた。 ここは教会なのだから当然、神を祀っていることはわかる。けれど彼の言うそれは、どうにも意味が違うような気がしてならなかった。 「私の神は、明確な容貌はなく、その御名すら存在しない御方です。ですので、”かみさま”と。私も、神父様もそう御呼びしていました」 「名前も姿もない?…神なのに?」 「ええ」 困惑が顔に出ていたのだろう、彼が訥々と説明をしてくれる。 だが、本当にそんなものを神と祀って良いのだろうか。 「御方は、信じる神を持たず、祈るべき信仰を持たない全ての御魂の祈りの行き着く場所であり、叶わない願いの終着点ですから」 ますますわからなくなった。 訝し気に顔をしかめると、ふ、と空気を緩ませるように彼が笑う。 「貴方は神を信じますか、と先ほどお伺いしました」 「…ああ…」 「貴方にはいらっしゃらない、ということでしたが。それでも、一度でも神を想像したことが、その姿を思い描いたことがないと、本当に言い切れますか?」 「それは……」 ない、とは言えなかった。 例えばかつて、彼女がいたころ。まだ幸せだった頃。そしてそれを失ったあの時。理不尽を嘆き絶望したあの日。 その名を口にしたことが、その姿を想像したことが、果たして今まで本当に、なかっただろうか。 「”かみさま”はいらっしゃいます。しかし、そのお力が今この世界を変えることはきっとない」 「、良いのか、そんなこと言って」 いると言っておきながらさらりと力が及ばないなどという。 あまりにも自然にその存在を肯定するから、こちらもうっかりそうなのかと思ってしまいそうだった。 こてりと首を傾げながら、そうですね、などと考え込む彼に、少々薄ら寒いものを感じてしまう。 「この世界は、人間のおもいがあまりにも強いので、たぶん聞こえてはいらっしゃいませんよ」 「…本当にいるみたいなこというの、やめてほしいなァ…」 「ははは。まあ、そうですね、その御姿を想像したとき、その御名を口にしたとき、そこに”神”はいるのだと、そう思っていただければ」 「わかった。もう二度と口にしない」 間髪入れずに答えて首を振れば、彼は何が面白いのかまた肩を震わせて笑った。 それにしても彼の口ぶりからすると、明確に信仰を持っていない人すべてが想像して時折悪戯に口にする神がすべて、彼の信奉する”かみさま”になるということだ。なるほど勧誘などする必要がない。 「…その神様も、どうせなにもしてくれないんだろう」 嫌がらせも込めて口にする。少し大人げないことは自覚していたが、少しはめられたような気がして気分が悪かった。 ぴたりと笑いをひっこめたエイダが、相変わらず冷め切った声で言う。 「”かみさま”は、叶わない祈りの、行き場のない願いの集ったものですからね」
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Heart
あとがき
それってもう神様って言わなくないか、とはついぞ言えなかった。
Hearts
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本垢の下書き枚数がそろそろ限界に近いので避難場所
その時のブームしか描かない
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らくがきするばしょ
2018/01/14 19:59
全2話
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