TEGAKI
手書きブログへようこそ!
手書きブログは記事やコメントなどを手書きの文字や絵で行う、イラスト主体のブログサービスです。
みんなで楽しくお絵かき交流しましょう!
Twitterで新規登録/ログイン
ブログを書く
ギャラリーに投稿
小説を書く
マンガを投稿
手書きブログへようこそ!
手書きブログは記事やコメントなどを手書きの文字や絵で行う、イラスト主体のブログサービスです。
みんなで楽しくお絵かき交流しましょう!
Twitterで新規登録/ログイン
一寿 葵
お友達申請
お気に入り
ミュート
ウォール
(0)
ブログ
(83)
20xx年の彼女達とぼく
20××年、僕は彼女とすれ違った。 彼女は何処も見ていない目で少し俯き、胸元まで伸びた黒髪を病的に晒しながら、幽霊のように重い足取りで、廊下を歩いていた。空調の効いた院内では暑いのだろう、コートを左腕で抱え、僕とすれ違った。嫌でも目に入る袖から覗く包帯。だが此処では珍しくない。むしろ普通だ。普通だと思う認識は間違っているのだが、普通なのだ。 彼女は、双巴梓。一昨日から、分裂症を理由に通院している患者の一人だ。 分裂症、解離性、その多くは強い思い込みによる。彼女もそれだろうと認識していた、若いし。 『彼』に会うまでは。 +++ 20××年、俺は彼女に声をかけた。 人に愛されたくて、家族に愛されたくて、人を愛したくて、壊してしまったのだという、彼女に。ひたすら壊れる程自責を繰り返す彼女に甘い囁きをすれば、泣いて喜んだ。コントロールしやすい女だ、そう認識していた。 彼に会うまでは。 +++ 20××年、彼は僕に笑った。 「初めまして」 向こうから声がかけられた。いつかすれ違った双巴さん。 「初めまして双巴さん、研修生の杭泣(くいない)です」 「僕は誰でしょう」 「はい?」 「僕は樹だよ」 嗚呼、そう思い込んでいるんだ彼女。か 「可哀想に、とか思ったでしょ」 「!」 『彼』は僕を小馬鹿にするように微笑んだ。 「仕方無いのは分かってるよ。此処には夢見がちで現実から逃げ出す為に色々失敗して致命傷を負った奴等の巣窟(パラダイス)なんだろ? 僕らがそう思われても仕方無い」 「僕ら?」 「僕とー、梓とー、」 10名以上の名前を呟いた。 「でもあの時僕と梓と『 』を残して皆沈んじゃった。僕と『 』が生まれて皆違うカタチになっちゃった。こんな風に」 どずん、 彼は僕の隣にいた知らない子の頭に仄かに光っている短刀を突き刺していた。知らない子は砂のように掻き消えた。 「杭泣さんには、視えたでしょ?」 僕は殺されるのを覚悟に頷いた。その挙動に彼はカラカラ笑い、 「僕が殺せるのは怪異くらいだよ。時々やっとかないと、鈍っちゃうからね」 それで話は終わり、次に会った時のが原因で、僕は怪異持ちになり病院を去り、免許を取り開業した。幸か不幸か彼との縁は切れなかった。 彼等が警察官になって、2ヶ月に1回のペースで、宿主である梓を満身創痍にさせる事が趣味になった彼を責めるが、効果はなかった。 いつバレるか知れない遊びを止めてくれる奴が現れる事を切に願うよ、まったく。 +++ 20××年、彼は俺に嗤った。 いつものように談話室で待っていると『彼』がやってきた。彼女の中に巣食う人格、という設定の。俺は彼の話をニコニコと聞いてやる。彼の時だと俺はいつも彼女にしてやることが出来なくて、苛々するんだが我慢我慢。 この頃になると、彼女は完全に俺に気を許している。極端に自己評価の低い彼女を操作するのは簡単だったし、彼女自身も誰かに構ってもらいたがっていた。 と、つい癖で太腿を触っていた。 彼はその度に俺を虫ケラでも見るような目で嗤うのだ。それが俺は嫌いだ。 「ねえ、怪異持ちさん。相談があるんだ」 「なんだ?」 「■■■■■■■■■■■」 それは、悪魔の囁きだった。俺の好奇心と嗜虐性を上手く刺激したこいつの罠に俺はハマり、 後日俺は退院した。その足で家を借り、女を囲い、そして 梓を 監禁した。 その一週間後、俺は怪異堕ちした。 悪びれずに彼は言う、 「僕はね、母親を愛しているんだ。梓を愛しているんだ。僕だけに梓を汚して穢して貶めて絶望させ心を壊す事が赦されているんだよ?僕に都合の悪い記憶は消してるし、見えない傷も知らない傷も教えなきゃ分からない。 僕はね、梓を嬲るだけの敵には寛大だよ?」
読者になる
Heart
あとがき
モブ闇医者さんでした、twitterにて投稿を再録。
梓の過去の一編。梓の知らない過去の話。
Hearts
応援メッセージ
コメントするにはログインする必要があります
腐る鱗と池の水 : 前へ
一寿 葵
お友達申請
お気に入り
あくる日の死霊課員
一寿 葵
2017/05/23 23:18
全2話
を送るにはログインする必要があります