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Mia kihäri
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赫景
水で濯いだようだった快晴が夕刻を過ぎるにつれて、赫く、焼け焦げたように変わっていく。辺りは縁取りを残して燃えたように紅蓮に飲み込まれる。 ぼうぼうと葦が生い繁る人気の無い小径を踏み歩く書生は、畑の中に立つ細い電信柱の陰に、黒い影が蠢くのを見た。目が、合う。体が慄く。抱えた風呂敷を握り直し、咄嗟に砂利道を走りだす。得体の知れないなにかが追ってきているような錯覚を覚え、後ろを振り返ることもできずにただ走った。下駄の鼻緒が指股に食い込んでじくじくとした痛みが走る。畑を抜けた先に、民家の並ぶ通りが見える。あすこまで、どうにか。転びそうになる脚を叩いて走らせる。その時、頬に冷たい食指が触れて、書生は怖気立つ。追いつかれる、目前に人が見える、黒い、人が。鹿島君、と叫ぶと、姿は振り向き白い顔がのぞいた。息を切らして鹿島の元へ走り寄る。鹿島の横を過ぎたところで立ち止まる。心臓が早鐘を打つ。ただならぬ雰囲気の書生に鹿島は問う、「なんだ、一体」 書生はどう説明したものか逡巡したのち、ただ「なにも」と話した。青褪めた書生が鹿島の腕を掴む。腕に手を触れた鹿島は葦の立つ向こうを睨んでいる。書生が恐々振り返ると、そこには血のように赫い夕陽がべったりと景色に張り付いていた。黒い影は見当たらない。 燃え立つような赫い景色を背にして鹿島は歩き出す。青い顔の書生も後に続き、二人は夕景を歩き去る。 黒い腕を見たことがある。 人の肩を追って薄墨の描線の様な腕が伸びているのを街中で見た。その時は目で追った人物が曲がり角を曲がっていったのでその後のことは知るところではないが、例の腕も大きな曲線を描いて、黒い液を垂らしながら角を消えていった。見たのは数度だったが余りにも非現実の行ないであったので書生は目を病んだか或いは頭か、と日々悩み続けた。 だがある噂話を耳にした。それは夜の喫茶店で三十路になろうかという男達がなにやら手元を覗き込みながら談話をしていた時のことだった。 「どうやらこの街には怪異が潜んでいる。俺の他にも遭遇した奴がひとりいるんだ」 そう言って無精髭の男は隣に座る目つきの鋭い男の肩に腕をまわして、此奴だ、と囁いた。 「此奴は俺よりも詳細に怪物を見ているぞ。話してやってくれ」 男はつり上がった目を閉じて、訥々と語り出した。 俺が見たのは、頭も目玉もない、胴体ばかりが馬鹿でかい黒い影だ。店の看板に張り付いていた。細い足と腕がずんぐりした胴から伸びていて、はっきり言って気味が悪かった。あんな生物は見たことも聞いたこともない。なんだこれはと目を瞬いてよく見ると、看板から腕を伸ばして人の脚を引っ掛けようとしている。悪さをする物の怪の類だと思い店屋の店主に塩を盛るようにと早口でまくし立てた。店主は困惑していたが言う通りにしてくれた。店から外に出ると、もう黒い怪物は姿を消していた。見間違いにしては鮮明すぎる記憶が俺の頭に刻まれちまっている。こんな話、誰にしても信じてもらえない。信じるかどうかはあんたらが決めてくれ。 憮然とした面持ちで話し終えると、男は鳥打帽を目深に被り直し、椅子に深く体を預けた。 「なあ、聞いただろう。確かになにかがいるんだ、この街には。おまえらもなにか見たら、遠慮なく話してほしい。共に精神科医の許へ行こうってんじゃあない。写真にでも収めて、もっと知っている人間をかき集めるんだ」 出版社へ写真を持っていけば記事のネタに高く買ってくれるだろう、と話は続き酒が入るとあったのかなかったのか有耶無耶な空気になってしまい、書生は耳をそばだてるのを止めて勘定を支払い店を出た。心臓が嫌な鼓動を刻んでいる。やはり、あれは物の怪の類なのだろうか。他にも見える人がいる、きっとそのうち週刊誌で大きく取り上げられることになるのでは、と誰にも告げられない書生は成り行きを見守る他なかった。 予想に反してひと月経ってもそれらしい報道や特集は成されなかった。新聞や週刊誌の隅まで目を通したが、怪異について取り上げる記事はどこにもなかった。やはりあの男達の計畫は頓挫してしまったのだろうか。 秋生の自宅へ勉強をしに行った日に、それとなく噂の真偽を聞いてみたことがあった。 「怪異ねえ…都市伝説みたいなものだろ?」 この目で見たとは言えずに書生は秋生の話を聞くにとどめた。 秋生は怪異の噂について肯定も否定もしなかったが、あまり信じていないようだった。周りに知っている人はいないという。 場所は、と聞かれて明治と大正が溶融する通りの話だ、と伝えると、半信半疑の表情は剣呑な眼付きに変わった。 「大昔の、大正通りより向こうの話なら、有象無象が蔓延っていてもおかしくはないかもしれない……。書生君の住む時代の通りが近いのか。あまり出歩かない方がいいかもしれない」 黒い怪物の噂はそれから少しずつ広まっているようで、特に大正と明治の狭間に生きる人々の間で囁かれているらしかった。書生は数度見たきりだったが、他の人間も同じようで一度姿を見るとその後見つけることはなかったという。本当に人に害を成す物の怪だというのなら、姿が見つからないことこそ恐怖であり人間にはまるで対処法がない。見えない怪異は、人間のすぐそばに迫っているのかもしれない。
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Heart
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Hearts
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Mia kihäri
見て下さってどうもありがとうございます。
///不定期開催///
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いつもお世話になっているかずのこさんと「創作アイドルさんについて語らうラジオ的キャス」を企画しております!
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