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とある夜 居酒屋にて
自身の働く店のトップが、最近少しだけ複雑そうにしている。お酒をささやかながら幸せそうに呑む男だったのに、今は眉間に皺を寄せて無理難題を吹っかけられたときのような表情である。どうした?と聞いてもうるせェの一点張り。強情になると決めたらとことん強情な男だな、と再度実感をして溜息を零す。その溜息ですら癪に触るのか、横目で睨まれる。 「三谷に言わせれば月の物だな、康二」 「ここまで引っ張る月の物がある奴がいるなら、そいつは丁寧かつ丁重に隔離してやったほうがこの世のためだな」 「自滅的」 「自嘲的なんだよ」 「そろそろ末期だ、認めろ」 「末期じゃねェよ……クソ、」 胸に詰まる黒い何かを溜めきれないように声を歪ませると、きっちりと整えられた自分の前髪を乱暴に掻き乱す。隙のない存在であった姿が、緩んで見える。 「そうしていると昔を思い出す」 ふと、学生時代に想っていた相手にてんやわんわしていた頃の康二を思い出した。あの時も、その人が無茶をするたびに康二はどこまで関与していいのか こういう風に頭と精神を擦っていた。 「決断が必要なんだな」 「……そりゃな」 腹が決まればなりふり構わず格好良く誰よりも先に走り出せる癖に、そうなるまでにはこうして時折力を溜め込むためにストレスが必要不可欠らしい。少し難儀な奴だとも思う。康二が康二たるに必要なことなら見ないふりもやぶさかではないのだが、いかんせん今回は問題が問題らしくいつものどうにかなるであろう苛立ちに見えない。煮込まれすぎている。そうなると慣れ親しんだ間柄としては、つい口を挟みたくなってしまう。無粋であるのはかわっているのに。 「言われなくてもわかってる事は言わない主義だぞ、俺は」 「その段階でその主義は半分廃止だろーが」 「康二、」 「だァってろ、直ぐ名前呼べば大人しくなると思ってんだろテメェ犬かオレは」 「犬はもっと賢い」 「馬鹿にしてんだろ噛み付くぞ」 「犬は欲望のままに動ける。お前はどうなんだ、康二」 「うるせェなァもう」 もう聞きませんというように、そのままジョッキビールを煽る康二。その瞬間ガラリと個室のドアが開く。こうも雑にドアを開ける今この場では一人しかない。 「人がお花を摘みに行ってる間にたっのしそーーーな話ししてんじゃないよも~~! なんでいっつも私だけのけ者なの????信用がないの????信用性の問題なの?? こんなに素直でイイコでまっすぐで悪いこといわなくて良い子で純粋の塊なのに?? 何が問題なの何が不服なの性格が全てなの……好かれない人間は罪ですか罰ですか? べっつに万人にすかれたくね~~~~~しな!!!うははははは」 一人で拗ねて寂しがって文句を言った上に落ち込んで論議を始めんばかりな勇ましい顔がそのまま吹っ切れた顔をして大爆笑をしている。ただの明るい人間をここまで情緒不安定にする酒の力はすごいな。すごいというか三谷が酒と相性が悪いだけか、ただ単に。 「話しても覚えてないからだろう」 「テキトーな奴にはテキトーな話ししかしねェだろ馬鹿」 「呆れながらマジレスやめて酔い覚める」 大人しくさっきまで座っていた出入り口間際の席についた三谷が、一つ満足そうに溜息をつく。 「ンフフ。でも、やっすんは間違わない男だからなんにしろ、だいじょーぶでしょ」 外で話していた内容が聞こえたのかそういう風に元より思っていたのか三谷がこういう状態なので意図は掴めないが、自然にテーブルに頬杖をついて、こてんと頭を転がす。自信満々に、ご自慢の家族を紹介するように笑うから流石の康二も毒気を抜かれて隣で微かに笑みを零す。 「ばーか」 「愛あるばーかと聞いたらねぇ貴方。痛む心より踊りだす心でしょ」 「意味わかんねェよ」 「信用と信頼と親愛だよ康二くん。トリプルS。Sランクのウルトラレアよ?」 「おまえな、ゲームのやりすぎだって自覚を持て自覚を」 二人のいつもどおりの和やかな会話を聞いているとこちらまで口元が緩む。頼んだ日本酒をちびりと飲んで、その旨さに瞼を下げる。 「今日も旨いな、酒が」 気になる人を思う想いは当てられる。 今少し、ワインが恋しい。
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