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【伊澤真人】彼を失ってからの御話
あの人また失恋したのか 二ヶ月は部屋からでてきてないらしいぞ なんでそんな難しく考えるんかね 売れっ子小説家の頭ん中はわからんよ 我々書かない人間にはねーー 「伊澤さーーーーん!!」 インターホンとノックの音が繰り返し繰り返し響く。女の子にしては落ち着きのあるアルトの声が、ドア越しに篭って聞こえる。 「そろそろご飯食べなきゃ死にますよーー」 ガチャガチャとドアを乱暴しているかと思いきや、ガチャリといつものようにドアが開く。トタトタと足音が、床に転がる俺の耳元で止まる。 「伊澤さん、死ぬ気なの?」 上から降ってくる、単純な疑問。 「死ねないなぁ」 「死にそうですけど」 「…ん、」 とりあえずこれ食べて!と口に遠慮なく突っ込まれたのは朝の軽食にと企業に作られたゼリー。そろそろと呑むと体に染み渡る。 どれほど、飲まず食わずだったのだろう。 「伊澤さん臭いから風呂入って!その間部屋汚いから掃除する!」 「あの、まだ、動けないんだ、けど」 「寝るなら風呂で寝て!」 「…(暴君…)」 動きそうにもない体を力の限りにお越し、軋んで叫ぶ肉体に鞭打ちながら立ち上がる。 「伊澤さん、あと何話で完成?」 「…、」 指を三本立ててフラフラと風呂場に向かう。力を振り絞り彼女を振り返ると困ったように、しかし楽しそうに笑む祥子ちゃんに失笑を零し、俺は脱衣所に入る。 彼女は俺の小説が大層好きらしく、事あるごとにアタックをかけてくる。彼女曰くーー”観察対象”ーーらしい。俺も彼女の興味に興味があるから大して嫌とはおもわず、二年前から彼女のお世話に身を任せている。祥子ちゃんに会うまでは適当に誰かを捕まえていたものだが、彼女は捕まえずとも捕まりにきてくれるので俺も楽をさせてもらっている。 「…出たよ」 「伊澤さん風呂で寝てた?」 「考え事ともなくぼんやりしてた」 「寝てたんじゃないですか」 「キミは母みたいなことを言うね」 けたりと笑うと、少し安心したように笑う祥子ちゃん。前に一度、彼女に聞いたことがある。なぜ俺に構うのか。愛でないのはわかりきっているので、愛以外で と、聞いた。すると彼女は、「飛んで火に入る夏の虫に大して思う、刹那の憐れみです」と言った。あまりに詩的で。酷い言いようで、つい、笑ってしまったのを今でも覚えている。 「お布団干してます。あと私の母が伊澤さんに、っておかず沢山持たされました。あと、は、散らかってるの適度に片付けてます。あと、いるかわからないのはまとめてダンボールに詰めました。あと!!」 「ん?」 「…これ、捨てますか?」 マシンガンのように言葉を放ち続けた祥子ちゃんは、最後に地雷を手にとってみせた。 「”あけない よる”。」 「…本に罪はないよ」 「例えばわたしたちの言うところの携帯写真のようなものが伊澤さんにとってコレなら捨てた方がいいと思います」 「ふ、…キミはいつも正しいね」 「……、」 「睨まないでよ、怖い」 真っ直ぐな少女の目は、俺の名前なんかより実に真実を帯びていて。まるで怖いものはないみたいで。 「祥子ちゃん、」 「なんですか?」 「ありがとう」 頭を軽く撫でて、愛を持って軽く叩けば、堰を切ったように彼女の瞳からボロボロと溢れる、透明なソレ。ーーーああ、また泣かせてしまった。そんなつもりはいつだって毛頭ないのに。彼女はいつも敏感で。 「~~~っ、もおお…っ」 「俺が泣かないから、」 「そうですよ…っっ、ほんと、わかってるんなら、な、泣いてください…っ!」 俺はいつだって泣いてるよ。 (執筆中なら、何度だって。)
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