TEGAKI
手書きブログへようこそ!
手書きブログは記事やコメントなどを手書きの文字や絵で行う、イラスト主体のブログサービスです。
みんなで楽しくお絵かき交流しましょう!
Twitterで新規登録/ログイン
ブログを書く
ギャラリーに投稿
小説を書く
マンガを投稿
手書きブログへようこそ!
手書きブログは記事やコメントなどを手書きの文字や絵で行う、イラスト主体のブログサービスです。
みんなで楽しくお絵かき交流しましょう!
Twitterで新規登録/ログイン
ゆみょん
お友達申請
お気に入り
ミュート
ウォール
(13)
ブログ
(1363)
凪たる朝の我なれや
凪たる朝の我なれや 思えば恋文など書いたことがなかった。 私はいま作家先生と生活をしていて、懇意にさせていただいている。 元はおじさま。複雑な一族だから、百年くらい昔に遡れば血が繋がっているかもしれない間柄で、もしかしたら将来の結婚相手。敵になるかもしれない。 許嫁なんて、そんなものね。 ひっそりとした町で、郵便ポストみたいな気分で暮らしをしている。素敵な手紙が届いたり、不幸の手紙が放り込まれていたり、気づいていれば投函されるけれど身近にありすぎて意識に浮上しないように、ひっそりと。 昨日は茄子が安かったから、それを縦に切って油で素揚げした。お醤油とすり下ろした生姜でひたして、鰹節をかけたものを皿に盛り付ける。白米ではなくそうめんを茹でた。風鈴の音と扇風機の音がする季節だ。 「先生は次はどのようなお話を書かれるんですか?」 「蓋然性のある話」 「がいぜんせいって?」 「プロバビリティー」 ぶっきら棒に返事をして、うんうん唸りながらも手はキーボードを叩き続けている。先生はこの家でものを書く時はノートパソコンを膝に乗せて、妙に傾いた正座をする。ノートパソコン、熱をもつのだから夏場は暑いでしょうに、と声をかけたことがあったけれど、まあこれでいいのさと返された。普段静かな機械がファンを駆動させる音がするのだから、やはり熱くなっているのだ。それでも汗をかきながら作業を続ける姿はなんだか不思議だと思う。私は熱いのはごめんだ、こうして油を使うのも、竃に放り込まれたように蒸したお台所に立つのも億劫。 開け放した勝手口からぶわり、と風が流れ込んだ。暦の上ではもう秋だ、どこかの雨雲から吸い取ったのだろうか、ほんのり湿気でべたべたした風。 去年揃いで買ったガラスの器にめんつゆを入れ、少しのお水と氷で調節した。居間に二人分運んで一人分のいただきますをする。物書きなんぞ放っておけ、ごはんの食べごろは逃げるのだ。 「可能性とは違うの?」 揚げた茄子に入れた生姜をめんつゆに溶いて薬味にする。先生は聡い人だから、先程の続きだとすぐに気がついた。 「それじゃあポッシブルみたいな意味になるんじゃないかな、確率みたいな意味があるから……」 「小難しい話なのね。日本語なのにややこしい」 「蓋然性って言葉だって、そいつがどんな意味を持っているかなんて気づいちゃいないわ、きっと」 先生はパタンとノートパソコンを畳んで机ににじり寄り、箸を手に取った。 「それが蓋然性だよ」 人懐っこい笑みを浮かべてにやりと笑っていた。 了
読者になる
Heart
あとがき
■制限時間:三十分■お題:蓋然性のある話■文字数:1066字■にとづきで即興小説でした。
Hearts
応援メッセージ
コメントするにはログインする必要があります
次へ : 猫の姉妹
ゆみょん
最期に文字になりたい。
(ログと小説)
https://www.pixiv.net/member.php?id=2004628
(生存確認)
http://31moji.tuna.be/
(GALLERIA)
https://galleria.emotionflow.com/38630/
お友達申請
お気に入り
創作断片
ゆみょん
2017/11/27 22:06
全11話
を送るにはログインする必要があります