TEGAKI
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漆原 白
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其の壱:交差する影
時は戦乱渦巻く戦国時代――――――― ここにまた一つ、激動たる時代の流れの中で 2つの影が交わろうとしていた。 深緑の葉が鮮やかな色に染まり始める、そんなある日。 柔らかな陽が縁側へと射し込む。そこに律儀にも背筋を伸ばした男が静座していた。 お世辞にも紅葉を楽しみ情緒あるその景色に歌を詠みそうにない気難しげな面構えである。 ふと、鶯色の短い髪が風に撫でられたのと同時に、その静寂を破る音が転がり込んで来た。 「片倉様ァッ!片倉様、大変だァ!!」 さぞ慌てて来たのだろう男、門の番をしている部下は片倉と呼ばれる男の足元まで覚束無い己の足に引っ掛かり土に塗れながら転がる。片倉はその様子にため息をついた。 「だらしねェ!!」 空気が震える程の一喝。転がっていた門の番は小さな悲鳴を上げ刹那に身なりを正すと頭を垂れた。 「で、どうした。まさか、政宗様がまた城を抜け出したとか言うつもりじゃねェな?」 「い、いやっ!政宗様の事では…」 過った憂いではない、片倉は眉根を寄せると門の番の次の言葉に唖然とした。 詰の門には多くの部下が槍や刀を片手にざわめいていた。無理もない。濡羽色の陣羽織を 靡かせながら歩めば片倉の存在に気付いた部下の面に少し安堵の色が浮かび自然と門への道を開ける。 口々に片倉様、片倉様といきり立つ男たちを下がらせ片倉は閉ざされた門の向こうの者に問いかけた。 「徳川が間者とお伺いしたが、貴殿は何者だ?」 暫しの沈黙。門を挟んだ向こうから愉快そうな笑い声が聞こえ部下が更にざわつく。 「あっはっは、ふ、ああ、すまない。僕を間者って言うからつい」 「間者でなければ何者か、名を申して頂きたい」 間者、とは勿論、片倉の口からでまかせだ。 門の番からはある男の名を聞いている。 だが、この戦乱の世、おいそれと人の言葉を信じるのは軽率に破滅を呼び込む。 わざと怒らせる様な言葉を浴びせ真実の底を推し量るのも片倉の仕事の一つであった。 「僕は、三河が総大将。徳川家康、ってさっきから言ってるのだけど」 このような東北の果てに、前触れもなく 三河から、東照大権現、徳川家康が来たと 言うのだから。 *** 「いやぁ、急にすまないとは思ってるんだけど、是非とも政宗君に会いたくてね」 片倉は門をじっと見つめ家康の言葉を一言一句、咀嚼していた。底の浅い者ならとうに怒ってもおかしくはない筈だ。 だが、家康は怒るどころか笑った。総大将が間者と言われ笑える男が居るだろうか。 徳川家康、東照大権現の名は伊達ではないと言うことか。片倉は一度、深くため息をつくと 「開けろ」 と、部下に有無を言わさず門を開けさせた。 重い木の扉が開く音が緊張感に張りつめた空気にやけに響く。 門の先には葵の紋を携えた男が笑顔で立っていた。この男こそ日ノ本の三大勢力の一つ、徳川家康。 片倉は付き人には目もくれず家康を見据えた。 「竜の庭は物騒だね」 「おっと、敷居を跨がねェで貰おうか」 「……入るなってことかな?」 得物を持つ部下たちをぐるりと見渡しても尚、相変わらずニコニコと笑う家康に心底、 底の知れなさを感じる。 「礼儀で門は開けたが、政宗様へのお目通りを許したとは言ってねェ」 肩を竦めようとも何をされようとも片倉は招く気は更々ない。 そう恐れもせず顔に出し、帰れと促す。しかし、そんな事露も知らぬとでも 言うかの様に家康は困ったな、と隣の付き人をちらりと見やる。 端正な顔立ちの男は無駄口を叩かず直ぐに家康に鏡を差し出した。 「ずんだ餅のついでに政宗君に会いに来たんだけどな」 ずんだ餅の二の次、その言葉に片倉の眉がピクリと動く。 家康は付き人に鏡を持たせ髪に乱れがないか、延々と己を眺めては髪を撫でつけた。 自然と体に力が入る。刹那、付き人と目が合ったが片倉には取るに足らない。 今は目の前の、主を愚弄した家康が重大だった。後ろに控えている部下が片倉の得物である、 白刀、白雪を差し出している。 ピリッとした片倉の鋭利な怒りに呼応され周りも身構えた、その時、 「悪いな、俺ンとこの軍師はちぃっとばかしキレ症っつてな」 鉄紺の色が目の前を掠める。途端に見慣れた背が家康を隠していて片倉は得物に伸ばした手を引っ込めた。 「政宗様、」 「おいおい小十郎、俺に内緒にするなんて酷いな」 「貴方の耳に入れるまでもないからです」 「カカカ!折角の客に主自らもてなさねぇのは伊達の流儀に非ず、知ってるだろ?つーことだ、入れよ、家康」 「政宗様!!」 それ以上は言わせないと政宗は踵を返し奥へ行ってしまう。 続いて当然そうに家康が続いた。こうなってしまえば何を言っても聞いてはくれない。 どよめく部下に元の持ち場に戻るように告げ門の扉が閉まる音に振り返れば、 家康の付き人が未だそこに立っていた。目が合う。いや、見透かされている。 武人とは違う雰囲気を纏う付き人に屋敷に入るよう手招きした。 *** 謁見は1対1を好む政宗に小十郎はお茶とご所望のずんだ餅を持って行き、その足で 控えの間に入る。客人である付き人にも同じものを差し出した。 向かい合う様に腰を落ち着かせて熱い茶を啜る。 「先程は失礼した。俺は政宗様の軍師、片倉小十郎だ」 「……気遣い痛み入る。徳川が伊賀忍軍、服部半蔵だ」 軽い社交辞令、しかし小十郎は「忍」と言った付き人、半蔵に隠しもしない冷ややかとした視線をぶつけた。 一向に茶やずんだ餅に口を付けないのも多くを語らないのも忍と聞いただけで癪に障る。 正直、同じ空気も吸いたくないとさえ思う程に小十郎は忍が嫌いであり苦手であった。 「鴉、だったとは。なら礼儀を払う必要はねェな」 多くを語らず容易く死に夜陰に乗じて死肉を貪る様な下劣な集団。 小十郎から見える忍は、例え伊達忍衆、黒脛巾組でさえ全て鴉に見えていた。 冷えていく身の内を持て余しつつ鼻で笑えば、半蔵の視線も幾分か鋭くなる。 「テメェ、鴉が徳川家康の守り刀とはな。世も末ってことか」 「…ああも容易く崩される軍師もどうかとは思うが」 「なんだと…?」 鴉と侮蔑したが半蔵の、獲物を見据えた鷹の様な視線が突き刺さる。 『景綱、景綱…』 脳裏に、散々こびり付いた友の顔が浮かぶ。 『景綱…何故…』 悲しみと怒りを含んだ目が、小十郎を見つめている。 『何故、忍を信じた。景綱…!!』 ハッとすれば、空になった皿と湯呑を置く半蔵が開け放たれた障子の向こう整えられた 庭を見ている。永劫に過去に囚われている、そう嗤うかの様に風が木々を揺らした。 心を落ち着かせ半蔵と同じように庭へ視線をやる。 美しく重鎮な庭は今が戦乱の世とは思えない程静かで趣がある。 そういうことにあまり興味がない小十郎でさえ、そう思うのだ。きっと、目の前の忍も、 「鬼の小十郎、か」 「何だ?俺の事を少しは知っているのか?」 「知識程度にはな」 戦のない日常を願ったりするのだろうか。 「成る程な、どこの鴉も似たり寄ったりか」 「…その鴉とは」 「小十郎!」 名を呼ばれ小十郎は襖を開け三つ指をつく。 「客人のお帰りだ」 *** 大手門まで監視の意味で見送りを務める。 家康は満足したのかにこにこしながら半蔵に 「お土産でずんだ餅買って行きたいな」 などど談笑に花を咲かせていた。 色付く道さえ観光の様に楽しむ姿は敵国に来た武士とは思えない。 眉間にシワを寄せ、先導する小十郎はまあよく喋る狸だとあきれた。 「にしても、天険の地を生かした竜の棲み処はいいね、攻め落としがいがありそうで」 「狸の戯言にしては耳触りが良くねェな。陸奥の地は竜の庭だ、命が惜しけりゃ領地を出るまで政宗様を愚弄することを言うんじゃねェ」 「はははっ、君は本当に出来た竜の飼い犬だね」 これっぽちも気にしてないのか、家康は続けた。 「そんなにご主人様から貰えるご褒美が美味しいのかな?」 「おい、鴉、テメェの狸黙らせろ」 「え?半蔵、鴉なの?僕の守り刀が鴉って…どっちかって言うと…」 「色気のある八咫烏だと。三本足で」 真顔でくねくねする半蔵にああ、こいつら揃ってか、と眉間を押さえる小十郎であった。 「見送りご苦労だったね」 物凄く疲労感を覚えるがやっと静寂が訪れると思うとまだ我慢出来る。 「片倉君、君はさ、政宗君を目の前で失ったらどうなるんだろうね?」 「家臣たる者、あの世でも付き従うまでだ」 その言葉に偽りはない。どこまでも従う、黄泉の世界であれ地獄であれ、小十郎には政宗の盾となり刀となるのみ。 家康はその応えに満足したのか陽が傾き始めた黄金色の世界を一人、歩き出した。 それに付き従う半蔵の背に小十郎は家康の問いを問いかけた。ぴたり、立ち止まり半身 振り向く芥子色の髪は陽の光で頭を垂れる稲穂の色を彷彿とさせ何故か美しいと思わせる。 「失わせない」 顔色を変えず当然そうにそう応えた半蔵の背も黄金色の世界に消えていった。 「失わせない、か…」 忍のくせに一端の家臣のフリか、はたまた虚言か、と嗤った小十郎だが消えていった 黄金色の世界に目を細め暫くその風景を眺めていた。 続
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Heart
あとがき
*お借りしました
さとび宅:服部半蔵君
天窓さん宅:徳川家康様
赤間さん宅:伊達政宗様
出会い編、お互い最悪の第一印象だったらいいな^//^
閲覧ありがとうございました。
Hearts
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漆原 白
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鴉と野犬【半景】
漆原 白
2017/03/16 00:53
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