TEGAKI
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③菫の姫君/黒曜の王 前編 ※注意書きあり
【注意書き】 女性キャラがクズな男性モブに嫌な目に遭わされる描写があります (未遂だけど襲われたりとか) なるべく控えめを心がけましたが、それでも『逃げたくなるほど嫌なこと』を意識して敢えて不快な言い回しをしている場面もありますので、少しでも嫌な予感を感じたら画面を閉じて頂くことをおすすめ致します 前編に黒曜の王は出てきません ※十月十九日追記 悪い扱いを受ける描写を少し具体的に変更しましたが、全体の流れとしては特に大きく変わってはいないです 【注意書き終わり】 *** 黒曜の国、内と外の境目に近いところ 巨大な工場が建ち並ぶ、入り組んだ狭い路地を抜けるとそこは一面の雪原が広がっている その雪原の中に一点、墨を垂らしたような黒紫がぽつりと浮かぶ それは少女の美しい髪であった 少女は降りしきる雪の中何処かへ向かう様子はなく動かない、いや、動けないでいるのだ 黒曜の国は年中雪が降る冬の国 外へ出る際に防寒着が必須であることは幼い子供でも理解できることにも関わらず、その少女はワンピースのような薄手のペチコート、裸足、とても女性が外を出歩くような姿では無かった 倒れる少女に静かに雪が降り積もり、その小さな体は、美しい髪は、白く包み込まれていく 寒い…痛い… 私は…死ぬのね…? …それでも…“あんなところ”に…連れ戻されるくらいなら… 鈍くなっていく手足の感覚と意識の中で、その少女、しぐれはどうせ死ぬなら少しでも楽しいことだけを考えていようと思った ―…しぐれの髪はとても綺麗ね、お姫様みたいよ…― しぐれが幼い頃、母は毎晩しぐれの髪を慈しむように手に取り、優しく櫛でといていた 『ほんとう?おひめさま?』 母に褒められるたび、しぐれは嬉しくもくすぐったい気持ちで笑みを零した そんな愛らしい娘を見つめながら母はぽつりと呟く 『しぐれはどんな王子様と幸せになるのかしら』 『おうじさま?おはなしの?』 『そう、しぐれを幸せにしてくれる王子様』 幼いしぐれにはまだ深い意味はよく分からなかったが、絵本の中で白馬に乗り颯爽と現れ、悪魔と勇敢に戦い姫を救い、その手を優しく取り微笑む優しげな王子様の姿を思い浮かべた 『しぐれにも王子さまがいるの?どこにいるの?』 『そうね、どこにいるのかしらね… 今はまだ分からないけれど、しぐれが大人になったらきっと出会うわ』 ママ…私…白馬の王子様には出会えなかったけど… またママに会えるわ…パパと一緒に待っていてね… 暖かな遠い記憶を思い起こしながら、ついにしぐれはその意識を手放した *** しぐれの父親はしぐれが赤ん坊の頃に流行病で亡くなっていた 夫を亡くし赤ん坊を抱え、途方に暮れていた母の元へ父親の雇い主と名乗る男が現れた 男はしぐれの父にはよく工場で貢献して貰っていたからと言い、金がいるなら父が働いていた工場で働かないかと提案を申し出た そうして母は男の持つ工場へ働きに出てしぐれを育てたのだった しぐれも物心ついた頃から幼いなりにも母を手伝い、支え、裕福ではなかったが二人で穏やかに慎ましく暮らしていた しかしその生活はしぐれが16の時に一変する 母が工場で事故に遭い、亡くなったのだ 母の亡骸を前に涙も枯れ果てたしぐれへ男は自分の責任だと地に頭を擦りつけ泣きながら侘びた 侘びられたところで母が戻ってくるわけでもなく、ただその光景を見つめていたしぐれに男はせめてもの償いに成人するまでしぐれを引き取らせて欲しいと言った 母の時と言い、男がどうしてそこまでしてくれるのかしぐれは分からなかったが、しぐれは何か考えようとすると母を亡くした現実に直面することとなり、その辛さから考えを巡らせることが嫌になっていた かと言って他に行く所も無いからと言うことでしぐれは流されるままに男の養女となる 男は結婚していたが、子供は居ないようだった しかししぐれは子供として暖かく迎え入れられたわけではなく、実際はまるで数人いる使用人の中の一人というような扱いであった 男の妻は何かと小言が多く、機嫌次第でしぐれに暴力を振るうなどすることもあったが、しぐれは日々耐えて命じられた屋敷の仕事をこなしていた しかしそれよりも男の方が問題であった 母や自分に手を差し伸べたときの優しげな表情は周囲に己を賞賛させるためのアピールだったことをしぐれはすぐに理解した 男は何かとしぐれのことや実の父親・母親のことを『俺が助けてやったんだぞ』『俺のお陰だぞ』と恩着せがましく言った 客人の前でしぐれたち家族がどれだけ愚かだったか誇張して話し、そんな哀れな家族に己が如何に手を差し伸べて救ってきたかを美談として繰り返し語った まるで世界の危機に現れた救世主であるかのように しぐれを見つめる目や手つきもしぐれを苦しめた じっとりと観察するように見られたり、客人の前で見世物のように哀れな娘と紹介される度に男への感謝の言葉を強要され、肩や腰を抱かれたり、頬をぺたぺたと触られる しぐれが嫌がる素振りを見せると男は『ただの視線、ただの紹介、ただの親子のふれあい、たったその程度のことで恩人の俺に下心があるなどと言うお前の心が下品だ、はしたない、恥を知れ』と罵った しぐれは一秒でも早く男の元から逃げ出したかった あと4年もこんなところに居るなんて耐えられない そもそもこんな状況では成人までと言う取り決めも守られるかどうか怪しい しぐれは部屋を与えられてはいたが、いつでも屋敷を飛び出せるよう最低限の荷物を小さなトランクにまとめ、家を出る機会を伺っていた そして、しぐれにとって二度と思い出したくもない事態が起こってしまう その日は男の妻が所用で朝早くから外出していた 男も昼間は工場へ出ており、もしかしたら今日が屋敷を出るチャンスなのではとしぐれに緊張が走る 男を見送ってしまえば後は数名いる使用人の目だ しぐれは日々屋敷での仕事をこなす中で他の使用人たちのおおよその動きを把握していた その隙を突いてトランクを取りに部屋へ戻ったそのときだった 『!』 突然部屋の扉が開き、入口に男が立っていたのだ 『探したぞ、仕事をさぼってこんな所にいたのか』 『ど、どうして…』 仕事へ出かけたはずでは、と言いかけたしぐれの腕を掴み、男はしぐれを乱暴に床へ押し倒した 背中を打ち付けたしぐれは衝撃と痛みで一瞬息を詰まらせる 『あいつがいるとおちおち出来もしないからな…』 しぐれが逃亡の機会を伺っていたのと同じように、男もまたしぐれを襲う機会を狙っていたと言うのだ 『嫌!嫌っ!!誰か!!!』 『大人しくしろ、俺が今までどれだけお前を助けてやったと思っているんだ お前の方から抱かれに来たって良いくらいなんだぞ』 しぐれは声を上げ、じたばたと手足を動かし、もがき、抵抗したが、のし掛かる男の力には敵わず衣服は引きちぎられ、下着が露わになる ついに男がそこへ手をかけたとき、しぐれは近くに転がっていた花瓶を男の頭へ思いっ切り叩き付けた 『!』 『………』 散らばる破片にまみれ、動かなくなってしまった男を押しのけるとしぐれは泣きながら無我夢中で屋敷を飛び出した こんな雪の中、荷物も持たず、下着同然の姿で何処へ行くのか 男は死んでしまったのだろうか どうしてこんなことになっているのか 自分が一体何をしたと言うのか 様々なことが頭を駆け巡ったが一つ一つ丁寧になんて考えてなどいられず、しぐれはとにかく屋敷から一歩でも遠くへ逃げたい一心で路地を抜け、もう自分が何処を走っているかも分からない そうして辿り着いた雪原で、しぐれは力尽きたのだった… 『!』 ひどい悪夢にうなされていたしぐれは、意識を取り戻したと同時に飛び起きた 心臓がドッドッと大きく脈打ち、息が苦しい 額からは玉のような汗が流れ落ちる よりにもよって最低で最悪な記憶の夢で目覚めるなんて いいえ、いっそ全部とても悪い夢だったら良かったのに しぐれは思い起こされた嫌な記憶を振り払えず瞳にうっすらと涙を浮かばせた 涙が溢れ出てしまわないうちに拭おうと手を顔に近づける そこでふと、自分の現在の状態に気がついた 『……?』 両手には指の先まで包帯が丁寧に巻かれていた 柔らかく滑らかなシーツを捲ると足先も同様の処置が施されている 衣服も、意識を失う前は防寒機能など一切持っていない裸同然の姿でいたはずだが、今は見知らぬ暖かなガウンが優しく体を包んでいた 『…これは…?』 しぐれは訳が分からず、自分の今の状況を少しでも把握しようと辺りを見回した どのくらいここにいるのかは分からないが、カーテンが開けられた窓の外は明るく、雪雲の隙間から僅かに日の光が筋となって射している 部屋の中はベッドの他に木製のテーブル、ドレッサー、ソファと最低限の調度品が置いてあるだけで生活感は感じられないが、手入れが行き届いているようで家具だけでなく部屋の扉や窓枠までも塵や傷一つなく丁寧に磨き込まれているかのように全てがつやつやと瑞々しく輝いていた 壁紙やカーテン、ソファ、クッション、絨毯、全てに施されている柄や刺繍もお互いに邪魔し合うことなく計算されているかのように調和している しぐれは男の屋敷で何度か上等な品物を目にする機会があった しかし屋敷にあった物はどれも『良い物だからこっちを見ろ』と言わんばかりにギラギラと見せびらかすように主張が激しく、その為しぐれは高級と言う概念に余り良い印象は持っていなかったが この部屋にある物たちは滞在する者の視界を邪魔することなくさりげなく寄り添い合うように部屋全体の雰囲気を演出しており、しぐれはその品々を近づいてゆっくりと眺めてみたいな、と言う印象を抱いた きっと、今この部屋に揃っている調度品、その手入れをしている人間、全てが“いいもの”なのだろうと感じ取った 思わず部屋の様子に見惚れてしまっていたしぐれだが、ハッと我に返り改めて自分の状況を整理する と、とにかく…ここは…いったい何処なの…? 少なくとも…病院、では…ないみたい… まさか!と、一瞬、男の屋敷に連れ戻されたかと青ざめたが、こんな部屋の存在は知らないし、内装が大きく異なっている所を見ると少なくとも男の屋敷では無いようだった いや、けれど、もしかしたら、例えば男の別荘とか、自分の知らないどこかに連れて行かれてしまったのでは…と不安が拭えない もしも、もしも、心から違ってほしいと願っているが、この状況が男の手によるものならば今すぐここから逃げなければならない この包帯が巻かれた足は歩くことが出来るの? いえ、歩けなくても、歩くのよ しぐれはもう一度強い決意を胸にベッドから抜け出そうと試みる つま先が柔らかい絨毯へ僅かに触れた瞬間 『!』 『あら!目が覚めたのね!?』 ガチャ、と部屋の扉が開きしぐれは思わずビクリと体を震わせ扉の方向を見ると、開かれた扉の向こうから現れた女性とバチッと音がしそうなほど見事に目が合った しまった、と固まるしぐれを認識した女性はまるで花が咲くようにパァァッと満面の笑顔になり、しぐれへ駆け寄ったのだった 『本当に、本当に良かったわ…』 女性をポカンとした顔で見上げるしぐれと対照的に女性は組んだ両手を胸に当て涙ぐんでいる 光に当たるとほんの少し赤みがかった長い黒髪を後ろで高く束ね、笑顔になったり涙ぐんだり、如何にも私は明るく元気な人間ですと言わんばかりのこの可愛らしい女性はどうやら使用人のようだった やはりこの部屋の様子と同様に、身に纏う使用人服は無駄な皺もシミも無く見ただけで清潔だと分かる白いエプロンが眩しい 男の屋敷で見かけていた、ただ繰り返し洗濯されているだけのくたびれた生地を纏い無表情で仕事をこなす使用人と同じカテゴリーとして考えるには失礼に当たりそうなほど、エプロンに施されているたっぷりとした豊かなフリルはまるでドレスのように可愛らしく、女性にとてもよく似合っていた そこでしぐれはまた自分が見惚れてしまっていたことに気がつく この部屋で意識を取り戻してからと言うもの、しぐれの視界に入るものはどれもこれも魅力的過ぎていちいち心を奪われてしまう ベッドから降りようとしたまま固まっているしぐれに気づいた女性は少しつり目気味の大きな瞳をぱちぱちさせ、まるで心の声がそのまま口から出ているかのように話し出す 『どうしたの?外へ出たいの?…そりゃそうよね、ずっと部屋の中で眠っていたんだもの あら足はもう大丈夫なのかしら?…でもきっとまだ歩かない方が良いわよね、その包帯だもの どうしましょう…あっそうだ!車椅子があるのよ、あれがいいわ!ちょっと待ってて!』 しぐれが相づちを打つ間もなく女性は一気にそう言うと、パタパタと小走りで部屋を出て行ってしまった …と思ったらすぐに扉が開かれ、女性が部屋を覗き込むように顔を出した 『…?』 驚いたしぐれが女性を見つめていると 『そう言えば私…あなたの包帯を換えに来たんだった』 恥ずかしそうに頬を赤らめ、気まずそうに照れ笑いをしてみせる女性に、しぐれは数々の疑問も忘れ、ただ『かわいい』と思った
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Heart
あとがき
高級な部屋に縁がなさ過ぎてイメージ力と語彙力の貧困さに途方に暮れつつ
マイクラで部屋作るイメージを必死に膨らませました
Hearts
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後になっていたたまれなくなったもの、
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