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手紙(漸兄妹過去話)
* * * 了子様の手紙を終兄さんに届けるのは僕の役目だった。 病気で伏せることも少なくなり出歩けるようになっても、ほとんど蔵の外に出ることを許されなかった了子様は少しでも終兄さんとつながりを持ちたかったのだろう。 監視の中では書かれる手紙は何気ない日常の報告ばかりだったらしい。それでも終兄さんは手紙を読み終えると僕にお使いを頼むことがあった。 了子が夏物を仕立てたいらしい。布を注文をするから取りに行ってくれ。 手紙に書いてあるんですか。そう問うと、書いてないが書いてある、と笑った。 * 多くて月に4度。少なくとも月に1度。了子様は手紙を書いた。 ねぇ、しの。綺麗な石を拾ってきてほしいの。 ある日、甘やかな声で了子様にお願いをされた。 お兄様へのお手紙に添えたいの。封筒に入るものを。2つお願い。 きっと自由に手に入るものが無い了子様なりに、終兄さんに贈り物をしたいのだろう。花や刺繍じゃないのは意外だけれど。 僕はお二人が仲良い姿を見るのがとても好きだったから、2つ返事で引き受けて海岸沿いまで出かけてキラキラした石を2つ取ってきた。 おかげで遅くなった帰りを少しばかり咎められたが、了子様は嬉しそうに微笑んだ。宝物を見るように、にっこりと。 自分の任務がまっとうできたことに満足して意気揚々に手紙を届けたが、反応は鈍かった。 何かの遊びをはじめたらしいな。怪訝そうな顔で石を見ていた。 てっきり終兄さんにも喜んでもらえると考えていた僕は多少がっかりしたが、あとから思えばこのときに気づくべきだった。 終兄さんが読み取れなかったのは初めてだということと。 それでも、喜びを見せなかったということ。 * 手紙のやり取りは、その半年ほど後に唐突に終りを迎える。 二度と了子から受け取るな。手紙も、何も。 終兄さんは僕の顔を見もせずに告げた。 裏庭に煙が立つ。大きな缶の中で火が燃えている。燃やされているのは手紙だ。いつもいつも了子様が時間をかけて選んできた封筒と便箋。 何色が良いか。香りはどうしようか。何度となく相談を受けた僕は知っている。 しの、石は捨ててこい。敷地内ではなく、もっと遠くに。 足元を見ると、大きなガラス瓶があった。見覚えのある、色とりどりの小石が積っている。受け取ったときは怪訝そうにしていたが、それでも贈り物だと僕が言ったときには笑ってくれたのに。 辛い、悲しい。そんな思いよりも、もっと衝撃的だった。 終兄さんは了子様に対して辛く当たったことも、声を荒げたことも、これまで一度だって無いのに。傍から見ていて仲睦まじい、僕が欲しくてたまらなかった、理想のきょうだいだったのに。 どうして、急に、捨ててしまうんですか。どうして。どうして。 最後の一通を火にくべて、それが燃え尽きる寸前。終兄さんは口を開いた。 「本当は、始まりに捨てるべきだった」 それきり音が零れることはなかった。僕に聞かせるつもりも無かったのかもしれない。 言葉の意味を僕が知ったのは、了子様が出ていった後のことだ。 * 僕が届けていたのは妹から兄への思慕などではなく、間違いなく人ひとりへの強い恋慕だった。 誰にも言えない想いを了子様はずっと、兄へ訴えてた。 何度も何度も、届くまでずっと。 こいし、こいし、と。 <終>
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Heart
あとがき
しのぶ視点。元ネタというか、検問が厳しかった時代の恋文や、読み書きのできない出ていった妻から小石が届いたという話を見て。旦那さんからの返事は松の葉だったとか。あなたを待つ、と。すごいですね…。
Hearts
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