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夢の怪(漸兄妹過去話)
* 彼岸も過ぎた頃に、了子様は体調を崩された。 十歳になってからは幾分自由を得た了子様は、屋敷の中を歩けたことを楽しそうに話して下さったりとても元気そうに見えたのに。一週間も前から熱を出して、起き上がることも難しくなったそうだ。 「了子、どうした。何があった?」 「大丈夫です。ただの、風邪ですわ……」 「手が冷たい。……風邪ならそんな顔をするはずがないだろう」 見舞いに訪れた終兄さんに付き添い、僕も部屋に入ることを許された。 確かに終兄さんの言う通り、もともと白い肌は熱を無くしたかのように蒼白で、傍から見ていても風邪とは安易に信じられなかった。 かたくなに話そうとしなかった了子様だが、根気良く問いかける終兄さんに負けて、 「お兄様。どうか、変なことを言う子だと思わないで……」 そう前置きをしてから重い口を開いた。 とても恐ろしいものを見るようになった。 真夜中になると、目玉の無い生き物が圧し掛かってくる。最初は夢かと思ったがあまりにも感覚が生々しい。 目を閉じると襲われるのではないかと不安で眠れない――と。 険しい顔をして話を聞いていたが、やがて終兄さんは「わかった」と頷いた。 「了子、恐ろしかっただろうな。でも、それは“夢”だ」 「……、お兄様」 やはり信じてくれなかったのか、と悲哀に染まる赤い瞳に、ゆっくりと首を振る。 「お前に現れた化け物は、今日から俺の夢に連れて行く。その証に、今晩からは見ることは無い」 きっぱりとした物言いに、了子様も僕も目を見開いた。 「ほんとう?」 「ああ、安心して寝るといい。しの、今晩了子に付いていてやってくれ」 僕は、終兄さんは安心させる為に嘘をついているのだろうと思った。しかし了子様がおびえているのは事実なら、夢だろうと放っておくわけにはいかない。 「はい!何晩でも寝ずの番をします!」意気込みながら返事をすると、「お前が体調崩しても困る」呆れた声で終兄さんに言われた。 了子様は口元に手を当ててクスクス笑っていて――ほんの少しだけ頬に赤味が戻っていて、終兄さんの言葉が何よりも効くのだと実感した。 ……それ以降は、拍子抜けするほど何も起こらなかった。 僕もその日眠らずに番をしていたが不審な者を見ることもなく、了子様が魘されることも無く、翌日にはさっさと寝所から追い出されることとなる。 体調も見る間に良くなったそうで、喜ばしい。 一先ず安堵し、次いで浮かぶのは疑問だ。 どうして終兄さんにはわかっていたのだろう? 本当に夢に連れていくことができるのだろうか? 「“化け物”は元々俺のところに来ていた。無視してたから了子のところに行ったんだろう。目玉もないのによく嗅ぎ付けたものだ」 お見舞いから暫くした夜、眠る支度をする背中に恐る恐る問いかけると、淡々とした声が返る。 僕はぽかんとするしかなかった。終兄さんの口から“化け物”なんて言葉を聞くとは思わなかったから。 「ほ……本当に居るんですか?だって、2人に恨みを持つなんて――」 「……あれは」 振り返った終兄さんが薄らと笑っていて、そして―― ――この目に映ったものがわかると、後悔をした。 足を踏み入れて良い場所ではないと即座に理解できたからだ。 「お婆様だ」 じとりと手の平が湿る。膝が僅かに震える。目を、耳を閉じて塞いでしまいたいのに、体が動かない。 「母と俺を恨み、虐げ、そのまま息絶えた怨念だ。どうせ成り果てるのなら、もっと上手くなればいいものを、ヒトであった記憶に縛られてる。亡くした目玉もそのままで、手足を使わなければ動けない。ああ、無様なものだった。だからオレは二度と出てこれないように―――……」 くゎん、と耳鳴りがして、気づくと目の前に居た終兄さんの腕を掴んで体を支えていた。 「……冗談だ」 了子の為の嘘だ、と。 何時ものような優しげな声音で告げられて、何も返せなかった。 着物越しに感じる終兄さんの体温に縋り付きたかったけれど、不審に思われる前に手を離さなければ。 (ああ、どうか……) 祈るような心地で、ぎゅっときつく瞼を合わせる。 そうだ、これは悪い夢の話だ。現実にあるはずがない。なのに、どうしても開くことができない。 僕の目が、 貴方に絡みつく手を映してしまうのが、恐ろしかった。 <終>
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Heart
あとがき
しのぶ目線。過去話とは書いてますが、IFに近いかな。霊感があるとか無いとかは決めてないので…。祖母(父の母)は結婚に猛反対しておりました。
Hearts
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