TEGAKI
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緋壱
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ライカさんが消えた直後の話
「ここにただ留まっていて、その風は届くだろうか」 そう彼が零したのはいつのことだったか。 「失礼します。ご依頼の件、ご報告に上がりました」 控えめなノックの後、聴き馴染んだ声で入室を求める声がした。紙とペンの音しかなかった部屋にはよく響く。 入れ、と短く告げる。最低限の扉の開閉音に彼女の気遣いが取れる。 「すまないが、このまま聞く」 書類からは目を離さずに報告を促すと、小さく頷く気配がした。 「ではご報告します。現段階で判明している脱走兵、および脱獄者ですが…」 件の海賊処刑後、姿を消す者、裏切る者が後を絶たない。処刑に疑問を持つ者も少なくないことは分かっていた。城内を含め、国中がざわついているのだ。混乱に乗じて逃げるにはまさに絶好の機会だったろう。 一般兵から上階級の者まで、人数は予測して居たより多い。知った名前もいくつか上がる。 「それと…知識の塔からも一名、脱走者が」 ああ、その名前も、私はよく知っている。 彼女の退室を見届けたところで、書類仕事に一区切りついた。すべき事はまだまだ山積みではあるが、この頭では効率が悪い。 大きく背伸びをすると、肩や背中から鈍い音がした。脱力の弾みで椅子から少しずり落ちたが、そのまま背もたれに身を預け、ぼんやりと宙を眺める。 「…やはり、行ってしまったか」 外を望んでいたことは知っている。きっかけさえあればすぐにでも塔を去るだろうと、どことなしに感じていた。それが気のせいであれば、どれだけ良かったか。 学者というものは、時に酷く強欲だ。知識に関しては下手な金持ちのそれなど容易く上回る。紙の上だけでなく、その目で、肌で、感じ知ることを知ってしまったなら、おそらく二度と戻ることはないだろう。 「何も告げずに出て行ったのは、お前なりの優しさか、ただ余裕がなかったか…それとも、友と思って居たのは私の方だけだったか」 薄情者め、と小さくぼやく。本当にそう思っているわけでは無いが、口からこぼれた。分かっていても、予想はしていても、それでも、 「……また、おいていかれてしまったなぁ」 瞼を閉じる。 眠りはしない。まだ眠れない。 「君が居ないのは寂しいよ、ライカ」 かつて飲み込んだ言葉は、聞き手のないままただの音となり、虚しく消えた。
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Heart
あとがき
こちら(https://twitter.com/sr_orc/status/921744930078257153)を受けての短文。
ライカさん(srさん/@sr_orc )のお名前お借りしました。
Hearts
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緋壱
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クロフカ短文
緋壱
2017/11/01 23:04
全2話
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