TEGAKI
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越智@ぺぺろんSCM
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ないものねだりのトッカータ
二十時。 六代目火影の他里訪問に随行していたヤマトは阿吽の門を潜ると、コンビニ前のベンチでぼんやり座っている男を見つけた。 男の名はうみのイルカ。 次期火影と目されているナルトをまっさきに見出し導いた人物である。 とはいえ彼自身は少々優秀な中忍に過ぎない。 しかし、運命とはわからないものだ。 彼は今や、六代目火影はたけカカシの里内外公認の恋人である。 といっても上層部は六代目の縁談をあきらめておらず、あくまでも「下半身を含んだ世話係」として暫定的に黙認しているだけなのではあるが。 「うみのさん」 気配を察知していたのか彼は首をこちらに向け「おつかれさまです」と言いながら会釈をよこした。 その落ち着き払った態度がヤマトにとってはとても腹立たしい。 「あなた、こんなところで何をしているんです」 「買い物の帰りです」 間髪入れずに返してきた。 ヤマトが言いたいことはきっとわかっているのだろう。 『ダンナの帰りを迎えてやらないのか』と。 自分ならば式を放ってでも予定をつかみ、あたたかい食事や風呂といった万全の態勢で迎えるのにと悔しく思う。 嫌でも聞かされるカカシの惚気から二人の仲はカカシの猛烈なアタックにより成就したらしい。 そのせいかイルカのカカシに対する態度は、愛されている者の自信が漂っているように思える。 さらにカカシはそれで満足以上らしいのが無性に腹に据えかねる。 「ヤマトさんがご帰還ならばカカシさまもご一緒ですね」 「逆でしょう」 「は?」 「カカシさまにぼくが随行しているんです」 「同じことでしょう?」 情景は同じだが心情的には大きく違う。 「アンタの中心ははたけカカシだろう」と諭してやりたい気分だった。 ヤマトはズイと踏み出す。 「うみのさん、あなたわかってるんですか?」 「何をですか」 「あなたは六代目火影に選ばれたんです」 「はぁ」 ぬるい返事がヤマトの怒りをかきたてる。 「多くの女があなたの位置を占めたがっているのに、男のあなたがそこにいるんですよ」 男で中忍で、十人並み程度の容姿のくせに。 自分がとってかわりたいくらいだとヤマトは思う。 でもカカシはイルカを選んだ。 「もう少し自覚して先輩を大事にしてあげたらどうです?」 「自覚?」 うみのイルカはお人よしの教師の顔を一瞬捨てた。 「大事にするって?どうやって?」 鬼気迫る表情にヤマトは気圧され気味だ。 「食事を用意して布団を敷いて風呂を沸かしてカラダを洗って待ってろと」 太くまっすぐなイルカの眉毛がギュっとあがる。 「そう言いたいんでしょう」 確かにそう言いたかった。 だがそれは、要するに黙って夜伽を務めろという意味だったことに気づき、ヤマトはその横暴さに口を噤む。 ふっと表情を和らげたイルカはとても寂しそうに微笑んだ。 「そうします」 そう呟いてベンチから立ち上がり、ペコリとお辞儀をしてカラコロと下駄を鳴らし歩き始めた。 すれ違いざまヤマトは思わずイルカの腕をスイと掬ってしまう。 「すいません。その・・性欲処理のような言い方をして」 「事実ですから」 その言い方に再び腹を立て、ヤマトはイルカの腕をグイと捩じる。 「あなたは先輩を愛してないんですか!」 どんなに思っても自分の思いは遂げられないのに。 この男がいるせいで。 カクリとイルカの頭が俯き、そのせいで洗い立てであろう髪のいい匂いが漂った。 「オレはあなたがうらやましい」 イルカがポツリと呟く。 「任務に随行し、多くの時間をあの人と共有している最も信頼する後輩」 ヤマトの猫のような目がさらに細くなる。 「背中を預けられる唯一の人物、それがあなたです」 確かにそんな風に言ってくれることはあるけれど。 「オレはただ帰りを待ち、抱かれるのを待ち」 イルカはそのカカシが愛してやまないという清浄な涙をヤマトに惜しげもなく披露した。 「でもオレは柔らかい体で癒すことも、子をなし家庭を築くこともできない」 望まれて共に暮らしているのにそんな風に思う必要があるのか。 「オレはいつだってあの人と一緒にいられるあなたが妬ましい」 それはこちらのセリフだ。 どんなに思ってもカカシの心はイルカにある。 決して振り向いてもらえないのに、ねぎらいの声だけは甘く響く。 『テンゾウごめんね。休みなしで悪いんだけどオマエしか連れてけなくてさ』 そんな言葉に舞い上がり命を懸けた挙句、カカシはイルカのもとに帰ってゆく。 「「あんたなんか、大っ嫌いだ!」」 二人して肩で息をしてついて出た言葉はこれだった。 睨み合うさなか、呑気な声がかかる。 「何よ~、ケンカ?仲良くしてよ二人とも」 険悪なムードにまったく気づかず現れたモテ男が、トンチンカンにビールを三本買ってくるのはこの三分後である。
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Heart
あとがき
ホモの嫉妬は怖いらしいので
Hearts
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カカシをめぐる二人の男のフーガ
綾織越智
2017/07/26 23:21
全2話
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