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後継者の選定
家屋のリフォームや修繕をする仕事をしている。 今回の顧客は依頼時に「どうか泊まっていってください。家族は皆出ている日で、一人では寂しいのもありますから」と言われたので、いつもは帰宅してるが、泊まらせてもらった。 今回の修繕依頼者はお金持ち。自宅は斬新かつ機能的な素晴らしい邸宅。 ここのどこを修繕するのかと思ったら、自宅ではなく離れとのことだった。 通された先は土壁の15畳間で、床の間があり、大きく立派な座卓が置かれた昔ながらの和室だ。 完全にリフォームするか傷んだところを修繕するか迷っているという。 その夜。客間で寝ていると呼ぶ声がした。 「おい」「お前だ。おい」 目を開けると、棚の上に片手大のスライムがいた。 「うん、お前。ちょっと頼みがある」 自分で良ければ力になるけど。 「お前じゃないとできない。力を貸してくれ。一緒に来てくれ。悪いようなことは起きない。すまんが持ってくれ」 言われた通りにスライムを手に持った。重量感はそれなりにあった。 「こっちだ」と指す方に行くと、そこは依頼された和室だった。 「いいか。なにも喋ってはいけない。それでいい」 わかった、とうなづくと「じゃ、入ってくれ」と促された。 和室は夜中なりに暗かったが、座卓の上に4、5匹のスライムがいた。 それぞれがほんのり光っていたので、まるで蛍でもいるような淡い明るさをたたえていた。 スライムたちは個性的だった。 びよよんびよよん、べちょっべちょっ、きゅっきゅっブルブル、キュ〜ッキュ〜ッ。 なかなか特性をもった動きをしていた。 「わしをそこに置け」 言われたとおり、手の中のスライムを棚の上に置いた。 「そこにいろ」はいわかりましたと隅に控える。 棚上のスライムは一息つくと話し始めた。 「皆、揃っておるな。今日は皆に話があって集まってもらった。 いいか。わしは明日、引退する。 そこでお前たちの中から後継者を選びたい。 後継者になった者には、わしのように、しっかりここを守っていかねばならん。 そのためにも、それなりの力を要する。わかっておるな。では始める。 おい。そこに箱があるだろう。あれを持ってこい」 それはいろはカルタだった。昔の物だ。 「出して並べろ」と言うので、座卓上に数枚並べる。 「皆、知っておるな。これは人間が使うものだ。わしともなれば字も読める。 先に取った者にしよう。じゃあ読むぞ。犬も歩けば棒に当たる」 さあ、スライムたちがそれぞれカルタを取ろうとした。 ただ、そもそも読めないのか、それぞれ手近にある札を狙った。 が、絵札の上にベチョッと乗ったまま動けない者。持ち上げられない者。ツルツルと弾いてしまう者。 すでに取ることさえ叶わなかった。 主のスライムは間を置いて言った。 「…いや、いい。違うものにしよう。そうだな、その隣にあるアレだ。アレを持ってこい」 お次はコマを指した。 「これを上で回せる者にする。じゃあ順番でやってみろ」 これにもスライムたちは頑張った。しかし、コマも手強かった。 コマを回せばビシャシャシャッと散り散りになってしまったり、まっすぐ維持できず転がったり。 指示がわからずにコマの周りで自分が回ったり、興味ないのかコマから離れる者もいた。 やはり、これも断念。 「あ、あー。そうか。じゃ、じゃあこれだ! これを持てる者としよう!! お前、乗せてやれ」 次はヤジロベエが登場となった。 順番に上に置いてやったが、ヤジロベエの足がもれなくスライムを突き抜ける。 誰も持ち上げることはできなかった。スライムだから仕方ないんじゃないか、と思ったが言わないでおいた。 後継者選びも大変だ。 「ま、まあ。そうか。よし、よくわかった。じゃあ後継者は決めておく。もういいぞ。戻るとしよう」 またスライムを手に乗せて、客間に戻る。 「そういえばお前はどうしてここに来たんだ? あ、喋っていいぞ」 事情を話すと「そうか」と、うなづいた。完全リフォームと修繕、どっちがいいかな。 「あそこはわしたちの住まいでもある。変えてもいいが、今のままが好きじゃな。一番落ち着く」 そうか、ありがとう。そう返答して布団に入った。 翌日、家主には修繕を勧め、その方向で決定した。 そうなったら、1日でも早く手をつけねばならない。早々に邸宅を出た。 正門近くで、旅行から戻ったらしい家族に出会った。 母親、上の娘、下の娘といったところだろう。それぞれ高級そうな衣類を着た美人たちだった。 「あら、どなた」「ああ、そういえばリフォーム業者が来るって言ってたわね。それ?」 はいそうです。 「どうすることになったわけ?」 修繕の方向で。 「でしょうね。それがいいと思うわ、私も」「お願いね」 母親と上の娘は納得したようだ。 下の娘だけは、どこか訝しげにじっと見ていた。 なんとなくあのスライムたちは座敷わらしのような存在で 彼らがいるから、この邸宅があるのだと思った。 後継者が誰になるのか知りたかったが、自分はもう会えない気がした。
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Heart
あとがき
Hearts
応援メッセージ
ハート2つもありがとうございますっ! かわいいスライムはかわいいです!
(2017/07/21 18:05
by もとじー
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