TEGAKI
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ゆみょん
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ちっちゃな栄光
姉さんは変われないのね。 黒いワンピースを着るとき、背中のファスナーを閉めてほしいと言った妹がそんな風に続けた。 姉妹は毎日黒い服を着る。幼い時分よりそういう約束になっている。家族の中には往々にしてそのような決まりごとがあるものだ。冷たい水は朝しか口にできない。ノックは 三回ではなく二回。日が暮れたら入ってはいけない部屋がある。他の家庭に比べれば風変りで数も多いことは経験から知っている。けれども体に染みついたルールはなかなかに変われない。考えるなと言われれば考えない方が無理というもの。ほら、お前の頭上に酷く恐ろしいものがいるぞ、決して振り返るな。ね、簡単でしょう?破ってしまうのは簡単で、簡単だからこそ身についてしまった。極端な話にしか聞こえない例え話をしよう。朝以外の時間帯にコップに入れた冷たい水を口に含もうとすれば、この姉妹は卒倒する。 「姉さん、この家はやっぱりおかしいのね」 「あら、今更何を言っているの?」 クローゼットに嵌めこまれた鏡越しに視線が交差する。 はい、おしまい、と言って姉は妹の襟を整えた。染めてはいないがほんの少し変わった色をした髪が、重力に従いワンピースにこぼれる。 「褒めているのよ」 今度は妹がくるりと姉の方を向き直り、姉の襟を整えた。同じ形だけどすこしデザインが違う黒の服は、姉と妹では印象も異なる。ワインが入った瓶に黒い布を真上から掛けたときのような印象を与えるのが姉、その瓶を下から包み込み頂点で結んだような印象を与えるのが妹である。 「外には出るけれど毎日同じようなことを繰り返して、たくさんの約束事と一緒に閉鎖的に過ごしているなんて、やっぱり私には真似できないわ」 「名誉なことね」 くすくすと妹が笑いだした。 「名誉には”不思議な”という意味もあるんですって。昔古典の授業で先生が言っていたのを聞いたことがあるわ。まるで姉さんにぴったりの言葉じゃない」 何故服は黒でなくてはいけないのか。 それは姉妹が毎日悼んでいるから。 そういうルールなのだ。 葬式にちいさな誉れを。
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Heart
あとがき
お題:ちっちゃな栄光 制限時間:30 分
2013年のかもしれない。
Hearts
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ゆみょん
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創作断片
ゆみょん
2017/11/27 22:06
全11話
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