TEGAKI
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ゆみょん
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招待客は二度笑う
見えないものばかりを机に並べ、それでいて埃は払われていない。光が無ければ色も無いからどうしようもなく、乾燥した空気が汚れていないことだけは確か。 「あなたはそういうくだらないことばかりに気を取られているのですね」 今日も黒い服に身を包んだ彼女はつまらなそうにそう言った。 訪問者は自分一人で、相変わらず妹は不在だ。かれこれ姿をくらまして二年になるらしい。桜に黄緑色が混ざるくらいにいなくなり、姉はそれを認識できていない。だから食卓に並べられる食事は毎回きっかり二人分であるし、減らない皿の上の料理を三角コーナーに放り込んでいる自覚も無いのだ。その捨てられるはずであった食事にこっそりありつこうとする不逞の輩がいるとかいないとか、まあ、いたのであるが。 物語の介入、といえば格好が付くだろうか。 言葉遊びも大概にしろと言われるのは幼いころからの悪癖である。気取らなければ生きていけない。なにせ観客席からいきなり演じる側に引き上げられたようなものだ。舞台経験皆無の役者がアドリブを披露するにはそれなりに頭の回転が必要なのだと言い訳をさせてくれ。 とにもかくにも自分は「彼女のカウンセラー」という立場で好き勝手動き回る権利を得ている。勿論仕事はこなすし報告もする。けれど積極的に現状を付きつけるつもりはない。あなた、否、貴女の家は頭がおかしいんですよ。貴女の母親も父親もみんなおかしくて、認識の齟齬が起きているんですよ。だけどもうみんな死んでしまいました、めでたしめでたし、とでも言えばいいのか。 くだらない。 「先生、それでまた貴方はくだらないことを羅列しているのですね」 「そうだね、息をするように接続詞と予測変換を繋げて、あたかも意味が通じているように並べているよ」 「紅茶を冷ますような無粋な真似は止してくださいね」 湯呑茶碗にティーバッグを突っ込んだ紅茶は蒸らしすぎて渋くなっている。洋風の絵にかいたような家だというのに、こういうところが残念なのが面白いところか。この家にティーセットは無い。 3年前に妹が全部割った。買い足すつもりは無いらしい、というのは最近聞いた話。この娘の意識の境界はどこで反射しているのだろうか。 お茶請けに出された桜色の金平糖を咀嚼しながらお茶を飲む。 砂糖を紅茶に足すよりもおもしろい味がするし、口の中でころころと形が崩れていくのが愉快だった。 「ところでうさぎなんて引っ張り出して来て、今日は珍しいですね」 食卓の椅子は全部で四脚。いたって普通の四角いテーブルに対称で二脚ずつ設置してある。そのうちの半分を自分たちが座り、対面しているのだが、今回は彼女の隣に白い物体が座っていた。 「たまには参加人数が増えるのがお茶会の鉄則でしょう」 抱えるにはちょっと小さいかな、というようなうさぎのぬいぐるみ。 たしかこれは妹の品だった、はずだ。 おもむろに、うさぎのぬいぐるみの腹にスプーンを突きたてた。 いてっと思うのと同時に頭の中で腸たる白い綿が引きずり出される光景がリアルタイムで予測される。ああなんて可哀想なうさぎさん、自分のものでないから構わないけど。 しかしその予測は見事にはずれた。うさぎの腹から引きずり出されたのは金平糖。食卓の上にあるものと同じ桜色で、それがごろごろとこぼれ落ちる。 目を丸くして食い入るように見ていると彼女がそれを見て鼻で笑った。童話に出てくる底意地の悪い女王の見本だ。 「所有権の遷移があろうが無かろうが、ここが誰の場か認識できていないんでしょう」 ぼちゃんと音を響かせて金平糖が紅茶に溶けていった。 お見事。
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Heart
あとがき
お題:彼女の国 制限時間:30 分 2013年の3月20日だった。
Hearts
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ゆみょん
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(ログと小説)
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(生存確認)
http://31moji.tuna.be/
(GALLERIA)
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創作断片
ゆみょん
2017/11/27 22:06
全11話
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