TEGAKI
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ゆみょん
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ウォール
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ありふれた自切
体温が高くて頭がぼんやりすることは常であるので少々誤魔化しがきくとは思っている。けれど、喉がイガイガして、耳が空洞を渡る風の音を聞き取って、関節が痛くなったら風邪の兆しである。体温計で測っていないが、引いてしまったのだろう。この時ばかりは私は身体の訴えを聞き入れるしかない。精神は身体に従順だ。何年前に買ったかわからない市販薬を棚から漁って、カプセルを二錠口に放り込んだ。多めに水を飲んでおしまい。冷えピタはこのあいだの猛暑で使いきった。 すすきでもおはぎでもモンブラン特集でもなく、私の秋はいつだって金木犀の香りが連れてくる。アパートの向かいの大きなお家が金木犀を植えているのだ。普段は気付かないけれど、この季節は家を出るたびに存在を感じる。胸一杯に香りを吸い込んでから2階の自室に辿りつくまで、この世の美しい部分はすべて私が纏っている感覚。幸せなのだと思う。 昨夜も咲き始めた金木犀に心奪われながら帰宅していたのだが、運悪く通り雨に遭った。秋の雨は予想以上に冷たく、傘の代わりに羽織っていたパーカーをじっとりと濡らした。金木犀の香りは雨の匂いに負け、私は風邪に負けた。 静かな部屋にくしゅん、と虚しく声が響く。被さるように雨の音。まだ降り続いているのか。アスファルトに落ち金色の絨毯を作る金木犀の姿を想像しながら、今年の秋は早く終わりそうだと思った。金木犀が散ってしまえばあとは興味なんてない。 体がだるいなら勿論思考もだるくて、ただでさえ後ろめたい思考がより悲観的になる。 雨に打たれる前に受け取った写真のことを思い出した。大学時代の友人が「これ昔旅行に行った時のやつ、現像したからあげる」と渡してきたのだ。写真なんて携帯やデジカメがあるのに、わざわざ使い捨てカメラを持ってきた変な友人だ。データで渡せばいいのにお金を掛けてプリントするだなんて、結構良い趣味をしている。 鞄から取り出して眺めていると、金木犀を背にした集合写真があった。そうだ、これは 10月の旅行で、サークルの仲間と温泉にいったのだ。窓を開けている訳で無いのにあの特徴的な香りがする。写真から漂ってきているみたい。金色に目を奪われながら数枚ある写真を捲っていると、その中で一枚だけ赤い写真があった。金木犀でなく彼岸花。写っていたのは遠くに行った元彼だった。 シンクで写真に火をつけた。換気扇が煙を巻き取る。こうして思い出は切り離される。 さようなら、私の秋。げほげほと咳が止まらないのはきっと煙のせい。
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Heart
あとがき
お題:トカゲの風邪 制限時間:30 分 2013年9月27日だった。
Hearts
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ゆみょん
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創作断片
ゆみょん
2017/11/27 22:06
全11話
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