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①藍の王子/朱の王子 ※シリアス
ここは黒曜の国 空は年中雪雲に覆われ常に薄く陰を落とす雪国は古くからその膨大な積雪量そして火種や食料を始めとした資源の確保と常に戦ってきた 数十年前、独立と引き替えに厄介な領土を押しつけられた若い国王マキジは、止められない自然現象を前に機械工学の研究と開発に尽力した 何の資源にも恵まれなかった領土から研究を通して得た“技術”と言う武器を手に入れたマキジはその技術を積極的に他国へ売り込み、徐々に人脈と領土を拡大 その歴史は遙か昔人類が生きるために武器として利用した石の名になぞられ、マキジの国はいつしか“黒曜の国”と呼ばれるようになった 最果ての小さかった国は今では巨大な工場が幾つも建ち並び、人工的な光が常に街を輝かせる眠らない帝国へと成長する だがマキジは更なる野望を持ち、それを叶えるべくあらゆる手段を用いて若い姿と体を保った 人脈作りの為に度々城で宴を開き客人を招待しもてなしては自国の存在・素晴らしさをアピールした 勿論今宵も豪華絢爛な宴が開かれる 大広間では美しく着飾った紳士淑女が手を取り合いゆったりとワルツを踊る *** 『せっかく王子様が二人もいるんだからさぁ~、ちょっと決闘でもしてみてよ』 『…はい』 王であり父であるマキジのいつもの提案に黒曜の国第6王子・昴は内心溜め息を吐きながらも大広間の中央へ向かう 先ほどまで優雅なダンスフロアだったそこは王の一声ですぐに場所を空けられた 歩み出た二人の王子に視線が刺さる 侍女が二人の元へレプリカの剣を差し出した こう言った余興はいつものことだ 決闘と言っても別に国や命を賭けたり殺し合いをさせられるわけではない 王はゆったりと穏やかなダンスの光景に見飽きるといつも刺激を求め、何か面白いものを見せろと言い出すのだ 今夜の相手はどうだろうか 広間の中央まで歩み出てお互いに向かい合い、昴は相手を見据え耳を澄ませ、二人を取り巻く空気を肌で感じ取ろうとする ─…ねぇ、見て“朱の王子”よ ─…こう言った“余興”には滅多にお出にならないのに ─…あの静かに燃える朱い瞳を見るたびに心が焦がれてしまうわ ─…翡翠は戦いを避ける国ではあるが王と姫に忠誠を誓う勤勉な戦士たちは誰一人として日々の厳しい鍛錬を欠かさないと聞く ─…ならばこの勝負は将来それらを束ねるとされる朱の王子の圧勝であろう 指名を受けたもう一人の王子 それは翡翠の国の“朱の王子”、名は晃 歳は昴と同じくらいだろうか 昴は先ほど晃が翡翠の国王と共に挨拶へ来た際、マキジから彼が次期国王候補だと聞いたことを思い出す マキジは前々から温暖な気候と肥沃な大地に恵まれた翡翠の国に強い興味を持っているようだった 城の舞踏会へ招いたのも翡翠の国に目をつけた王が自国の誇る工業技術を翡翠の国の主産業である酪農業の機械化に利用できないかと言う口実で繋がりを持つためだった *** まだこの余興の習慣に慣れない頃、昴はこの決闘で重要なことは単純な勝ち負けの結果ではなく如何に見栄えの良い立ち回りを披露できるかと言うことだと思っていた 相手が幼い王子なら昴は勧善懲悪の物語さながらの敗北劇を演じ王子を喜ばせる 時には昴を勝たせようとする相手も居たが、どんな相手でも昴は空気を敏感に察知し合わせることで観客を沸かせた しかし王は何故自分にこんなことをさせるのか、昴はある日その理由を尋ねたことがある 返答は予想通りと言うべきか、『なんか面白そうだと思ってさ~』と軽く流されてしまったが、ただ王から感じ取れる空気に昴は本当にただの暇つぶしで自分がこんなことをさせられているようには思えなかった ある日の決闘で昴はちらりと王を見た 広間を見下ろす王の目は退屈そうな目でも始まる余興に期待する目でもなく、これから闘う昴以上に相手の動きやそれを見つめる観客たちの反応に注目し、周囲一帯全ての情報を見逃さないとでも言うような鋭いものだった …もしかしたら、王もこの空気を感じ取っているのではないだろうか 幼い王子を喜ばせ気に入られれば関係を築きやすいし、相手が自分を勝たせようとすると言うことは、こちらに恩を売り何か企みがあるかもしれないと言うこと そう言う空気を王も感じ取っているのではないだろうか 王の求める刺激とはいつもこの茶番の先にあるのではないだろうか 昴は自分の知らぬところで王が他国相手にいつもどんな駆け引きを行っているのか知らないが、この王が確実に人脈と領土を拡大していることは今までの歴史が物語っていた 自分の戦いぶりについて王直々に何か命令や指導を受けているわけではないが、きっと王は自分にそう言うことを求めているのではないだろうかと昴はこの闘いの意味を結論づけた だからきっと今回も、この次期国王の情報を得るために剣を交えよと命じられたのだろう 昴はいつも以上に神経を研ぎ澄ませ観察する 目の前の朱の王子は白を基調とした衣装に身を包み、装飾はシンプルであるが決して質素なものではなく上品さを感じる 王の着せ替え人形のように地位に見合わぬ派手な衣装ばかり身につけさせられる自分と比べ、着飾らずとも彼から現れている空気だけで彼は“本物”なのだと納得させられた 寡黙な印象を受けるが短い黒髪の中に混じる赤い髪と涼しげな目元の奥にはガーネットのような赤い瞳が静かに燃えている 彼が朱の王子と呼ばれる理由が分かる気がした 『…お手柔らかに』 『……』 一言声をかけるが晃はまるで既に闘いが始まっているかのように昴の一挙手一投足に警戒し、鋭く睨むだけで言葉は返さない 昴は純粋に己の力を振るって闘ったことはなかったが、決闘を演じる闘い方をしていく内に相手の実力や思惑をある程度推し量る力を身につけていた 昴は晃が自分へ向ける視線と立ち姿で“なんとなく”感じ取る きっとわざわざ演出など考えなくても自分は晃に負けるだろうが、晃に対する周囲の声や正に目の前の晃の表情を見たところ、きっと晃も今、自分の力量を観察している だがそれは自分のように闘いを演出するためのものではなく、黒曜の国が翡翠の国と関係を結んでも良い国であるかどうかを見極めようとしている 剣を握る手に力が籠もる 『それじゃ、始めちゃってよ』 王は楽しげな声で告げると指を鳴らした パチン、と指の鳴る音を昴が認識し踏みだそうとした瞬間…─ 『!?』 一瞬だった 昴よりも遙かに速い反応速度で晃はまっすぐ昴へと向かってきたのだ そのまま斬り掛かろうとする晃の剣を昴は剣で受け止め防ぐのが精一杯だった 『い………っ!』 しかし受け止めた衝撃は凄まじく、余りの衝撃に痺れた手は思わず剣を離してしまう 弧を描いて飛んでしまった昴の剣に観衆から『きゃあっ!』と悲鳴が上がる 幸い人に当たることは無く、ほっとする昴の鼻先に晃は剣先を突きつける 『!』 斬れぬ剣を与えられ、誰しもが余興だと知る社交の場で本当に斬られることなんて絶対にない 分かってはいたが、分かってはいるのに 何故かもしも今自分が不用意に動いてしまったら、容赦なく斬られて命をおとしてしまうと思わずにはいられない 動かせない体に冷や汗が滲む シン、と静まりかえった会場に王は手を叩きながら 『流石、将来翡翠の国を収めるとされる王子様だ』 一人だけ楽しそうに、歌うようにその声と拍手が響く その音に我に返った観衆たちは最初はまばらに、そして次第に拍手の音を広げていく 晃は一呼吸置いて昴の鼻先から剣を離すとまだ驚きの感情を残す侍女へ剣を返し、まっすぐ翡翠の国王の元へ戻る 一人ただ静かにその様子を見守っていた翡翠の王は何も口にすることなく静かに微笑んだ 剣先から解放され、観客に一礼した昴は晃の背中を追う 負けは分かっていた しかし負け方が良くなかった あんなに不甲斐ない負け方をするような国と“対等に”関係を結んでもいいものかと疑念を抱かれてしまっていたらどうしよう もしもその疑念を翡翠の王へ口にされたなら、現在の国王にとって次期国王の言葉はどれくらい重要視されるのだろうか? この国にとって不利な関係を築く結果にならないだろうか? 警戒していたはずなのに、まさか最初からあんなに本気で斬りにかかられるとは思わなかった 昴は不安で仕方がなかった 今ここで会話を交わすことで晃の真意を確かめたくて仕方がなかった 柔らかな物腰の翡翠の国王と違い、この朱の王子は先の一戦をただの戯れだと思ってくれそうにないと言うことだけは十二分に感じ取っていた 自分を追う気配に気付いた晃が振り向く 『お強いですね、あっと言う間にやられてしまいました』 嫌味だと誤解されないよう、細心の注意を払い柔らかく優しげな声色と表情を心がけるが、昴の深い藍色の瞳の奥は不安に揺れていた 晃はその思いを知ってか知らずか、縋るような瞳に寄り添うことも逃げることもなく真っ直ぐ見つめ口を開く 『…こう言った余興があると言うことは前々から聞いていた 演舞のように観る者を楽しませることが目的だと言うことも知っていた だが将来、国と民を背負う者として、勝負と名のつくものには絶対に敗北するわけにはいかない かと言って最初から差し出された勝利を不用意に手にするわけにもいかない だから一瞬で片を付けさせてもらった 招かれた身としてそちらの国のやり方に合わせることが出来なかったことは悪いと思っている だが私は私を支えてくれる皆の為にもこうするしかなかったことを分かってほしい』 淀みなく静かに言い放った後に一言、失礼すると付け加え朱の王子はその場を後にした 翡翠の国王は少しだけ昴を気にかけた様子を見せたが、 『今度は僕らの国にも遊びにおいでね、藍の王子』 少し困ったように微笑む翡翠の王に、昴は力なく『はい』と答え一礼するのが精一杯だった 遠ざかる背中をぼんやりと見つめながら、昴は思い知った ああ、あの朱の王子は相手の実力の方が下だと分かっていても、分かっていたからこそ負けられなかったのだ だから本当の決闘のように最初から本気で向かってきた 自分のように、演出された勝敗結果が後で自分の知らないところで王によって利用されるのではなく この王子には最初から後がないのだ 勝ちしかないのだ 国も、 人も、 未来も、 何もかもを背負っている 動作一つ、言葉一つで繁栄にも崩壊にも繋がる きっと想像してもしきれないほどの重圧だろう 比べて自分が王から与えられるものと言えばただ王を引き立てるためだけの豪華な装飾品くらいだろうか たったその程度の重さを体に感じながら昴は少しだけ、晃を羨ましく思った ─…流石に次期国王候補と6番目の王子じゃ実力差がありすぎたな ─…あの藍の王子はこの舞踏会で剣を振るうこと以外に王から何も任されちゃいないんだろう? ─…そりゃ上に5人も居るんじゃ仕事も権力も何も回って来ないだろうさ ─…あれじゃあ“藍の王子”ってより、 哀れな“哀の王子”だな
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後になっていたたまれなくなったもの、
確保(人に見せられないような状態)です
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2017/11/23 16:15
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