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④菫の姫君/藍の王子
菫の姫君と呼ばれる少女、しぐれは黒曜の国の490番目のお姫様だ この490と言う数字の大きさにしぐれは初め驚いたが、これは国が始まり代々受け継がれた結果の合計数でもなければ、今現在存在している姫と王子の合計数でもない そもそもそんなにいるわけでもないことをしぐれは後に国の歴史を学ぶことで知る 今思えば、広間に城の者全員を集めしぐれをそう紹介した国王マキジ本人が姫の名前である“しぐれ”をもじった数字だと得意げに告げた時点で、それはただの冗談であってそんなに重要な意味など無さそうだと気づくべきだったかもしれないが、あの何処まで本気で言っているのか分かりづらい王の真意を的確に汲み取ることはまだまだしぐれには至難の業であった 引き取られる際の取り決めも、王曰く 『言っただろ?君が選んだ答えには最高の環境を用意するって ウチの最高の環境はお姫様の椅子さ 座り心地が悪けりゃいつでも新しい椅子を探しに行くなり創るなり、どうぞご自由に』 とにかく好きに出入りしろと言うことらしい それだけ自由を許されていると言うことは、自分がそれだけ責任を任されるような立場では無い代わりにいつまでも胡座をかいているとある日突然椅子が無くなりひっくり返ってしまう可能性もあると言うことだった 突然手にした自由をどう活用しようとしぐれは悩んだ 余りに漠然としすぎて目標が定まらず、慕っているメイドのゆかりに相談すると『まずはお城のことを学んでいくのはどうかしら』とアドバイスを貰い、詳しい国の歴史やそれに伴い城で執り行われる式典などについての指導が始まった 家庭教師をつけてもらい、指導を受けていく内に、もしかしたら今の自分にはあれも必要では?これも必要では?と次から次へ具体的な課題が見え、担当教師と相談していたらしぐれの習い事はみるみる増えていった 利用、と表現すると少々冷たい印象で適切ではないかもしれないが、せっかく約束通り素晴らしい場を与えて貰ったのだ、突然椅子が無くなったって転ばないようにしっかり学んで行こうとしぐれは決意する はじめの数日はしきたりだとか、淑女の嗜みだとか、お堅い響きに緊張していたものの、新しいことを吸収するのはとても楽しく、しぐれは忙しくも充実した日々を送っていた 余暇時間はお城の中と言う環境に興味は惹かれるがかといって不用意にうろうろと歩き回るのもなんだかいけないような気がして、書庫にある様々な書籍を手に取り読みふけったり、時折窓の外を眺めたり、ゆかりやそのメイド仲間とお茶を楽しんだりしていた そんなある日 忙しい日々に少しずつ慣れてきた頃 しぐれの部屋へやってきたゆかりが紅茶を煎れながら唐突に 『そうだ!ドレスはお昼過ぎで良いかしら? サイズに間違いは無いと思うんだけど、念のため早めに着付けへ来るわね』 『え?』 『思いっきり可愛いの作ってもらったから、思いっきり楽しんでね!』 ドレス?楽しむ? 『…ごめんなさいゆかりさん、何の話かよく分からなくて…』 首を傾げながらしぐれが尋ねると、ゆかりも不思議そうに首を傾げた 『…私…お話してなかったっけ…?』 『え?』 『…あれ…?』 『?』 互いに目をぱちくりさせていると、ゆかりは徐々に直近の記憶を呼び戻したらしく、ハッと気づいた表情で 『ごめんなさい!…私…すっかり忘れてしまっていたわ…! 今日はね、お城の舞踏会があるのよ だからしぐれちゃんのドレスを作ってもらったから着付けに来なきゃって思ってたの… ああ、本当にごめんなさい…』 『ぶ、舞踏会…!?』 おしろのぶとうかい 物語の中でしか目にすることのないようなメルヘンチックな単語 本当にそう言うことをやっているのね…としぐれは最早驚きを通り越して感心にも似た気持ちになる 『いつも忙しそうですもの、全然気にしてないですよ …それより、本当に私も出席していいんですか?』 『大事な日だからこそよ! もうお姫様も王子様もみ~んな可愛く格好良くしてお客様に見せびらかしたくて仕方ないんだから!』 『は、はぁ…』 固い握り拳を作り力説するゆかりに圧倒されていると、コンコンと部屋の扉がノックされた どうぞ、と返事をすると扉が開き、 “少々”(同年代の女性より活気に満ちあふれていることは間違いない)お歳を召した、メイド姿の“豊満”(ふくよかと言ってはいけない)な女性が顔を覗かせた 『こんにちは、しぐれ様 今日は舞踏会だね、ドレス姿を楽しみにしているよ』 『こんにちは』 『お母さん…!』 ゆかりが思わず母と呼んだこの女性は黒曜の国のメイド長である ゆかりは父親も城の兵舎で働いており、幼い頃から両親が城で働く間は王子様やお姫様たちの中に混ざって一緒に遊んでいたらしい メイド長はニッコリ笑ってしぐれに挨拶をした …かと思えばゆかりと同じ少しつり目気味の目を更につり上げ、しぐれの側にいたゆかりに向かって威勢良く声を飛ばす 『…ゆかり!あんたやっぱりここに居たね! それに城ではメイド長と呼びなって言ってるだろう! 全くもうハタチ過ぎた娘が年下のお姫様に甘えて油売ってんじゃないよ! …ごめんねぇしぐれ様、毎日毎日この子が入り浸ってちゃ全然気が休まらないだろう?』 『いえ、ゆかりさんには本当にお世話になってて、いつも話し相手になって下さるので毎日とっても楽しいです』 『まぁ~、しっかりしたお嬢さんだねぇ~ この子が邪魔だったらいつでも追い出していいからね!』 『お母…メイド長!しぐれちゃんを困らせるようなこと言わないで下さい!』 『なァに言ってんだい! サボるところが無くなって困るのはゆかりだろう!』 『あ、あはは…』 少々過激な言葉のやり取りにしぐれは苦笑いしか出来ない 『みんな夜の準備でてんてこ舞いなんだよ! 今日くらい真面目に働いたらどうなんだい!』 『今から行こうと思ってたんですー!』 『言い訳は結構! じゃあねしぐれ様、悪いけどこの子連れて行くからね、ごきげんよう』 『は、はい』 『しぐれちゃ~ん、ドレスは後でちゃんと着付けに来るからね~!』 そうこうしているうちにゆかりはメイド長に首根っこを掴まれ連れて行かれてしまった 嵐のような二人が過ぎ去り、部屋はしーんと静まりかえる 強い口調でまくし立てるメイド長と、それに怯むことなく言い返すゆかりを間近で目にしたしぐれは思った 強いメイド長の娘もまた、強いのだと *** 読みかけの本を読み終え、しぐれは大きく伸びをした 一息つこうと思い立ったところでしぐれはテーブルの上の空のティーセットに気がついた 先ほどゆかりが用意してくれたもので、もう飲みきってしまっている いつもはメイドたちがベストなタイミングでやって来て下げてくれているのだが、今日はなんと言っても舞踏会の準備でみんな忙しい 現にゆかりはメイド長に連行されてしまった 下げに来ないからと言ってこのまま片付けなくていいと言うわけでもないだろう 優しいメイドたちにはいつも散々お世話になっているのだ、ティーセットを返しに行くくらい自分でやらないと罰が当たる そう思ったしぐれはティーセットの乗ったトレーを手にメイドたちがいる給仕場へ向かった その道中、城内の雰囲気はいつもと全く違っており、通りがかった吹き抜けを上からそっと覗き込めば、下は大広間になっていて男の使用人たちが声を掛け合いながらフロアの大がかりなオブジェや美術品の位置を変えていたり、メイドたちは恐らくテーブルクロスやナフキンだろう布地を抱え忙しなく動き回っている 少し歩いて視界に入った窓の向こうでは庭師が雪の間に折れてしまった枝は無いか、この晴れ間で溶けてしまった雪像は無いか、庭の様子を丹念にチェックしている 全員が一丸となりわいわいと会場を作り上げていく様子は幼い頃に町のお祭りの日を母と指折り数えて楽しみにしていたワクワク感を思い出し、しぐれの心は少しだけ高揚した 『きゃっ』 『おわっ』 周りの様子に気を取られていた瞬間、大きなオブジェの陰から現れた人物に驚きしぐれは小さく声を上げた しぐれと同じく驚いて声を上げた青年は衝突を避けようとしたのだろう、ダークブラウンの癖っ毛を揺らして一歩二歩と後ろへよろめく お陰で2人がぶつかることはなく、しぐれは青年にティーセットをぶちまけずに済んでホッとしていると 『し、失礼!お怪我はありませんか』 行き場の無い手を上げ下げし、わたわたと慌てふためく青年にしぐれも我に返り慌てて謝る 『だだ大丈夫です、ごめんなさい、私よそ見をしていて…ぁ、お怪我は…』 『いえ、私は全く…』 『本当にごめんなさい…』 『こちらこそ…』 しばらく2人であわあわと謝り合っていたが、お互い引っ込みが付かなくなり終わりどころが分からなくなった頃 しぐれの顔に気づいた青年がやっと謝罪以外の言葉を口にした 『…あの、もしかして…新しいお姫様…』 『!……………は、はい…』 間違いではない 間違いでは無いのだが、未だに慣れず素直に『はい』と言って良いものかと悩みながらも他に返しようが無いと割り切ったしぐれは遠慮がちに肯定の返事をする この人は私のことを知っている けれど私はこの人のことを知らない きっと王様がみんなの前で私を紹介してくださったとき、あの大勢の人たちの中に居たんだろう お姫様になると言うことはそう言うことでもあるのかとしぐれは顔が熱くなるのを感じる 早く胸を張って返事ができるようもっと頑張らないとと考えていたら、 『た、大変失礼致しました!! 私は黒曜の国の第6王子、昴と申します!!!』 しぐれの返事を聞いた青年は突然シャキッと背筋を伸ばし直立すると、昴と名乗った しぐれはその大きな声に肩がビクリと震えたが、それ以上に驚いたのが、 (第6…王子…すばる………って、) その名前“だけ”には覚えがあった 国の歴史を学んだ際、現在の黒曜の国は国王マキジの下で5人の王子がそれぞれ重要な役割を担っているから特によく覚えておくようにと教師に連れられ、国王が行った大勢の前での紹介とは別に5人の王子たちの元へ実際に挨拶に回った 初めて間近で見た王子様たちはキラキラと言うよりどちらかと言うとギラギラに近い印象があり、いかにもあの国王でこの王子と言ったような面々で、しぐれは極度の緊張で自分がどんどん小さくなって行く錯覚を覚えたほどだった そして他の王子や姫たちともその内お会いすることとなるでしょうと教師から渡された家系図… …と言うよりあの輝かしいトップ5たちの後に続く6番目から始まるリスト、そこで“昴”の名前を見たのだ その名前に特別興味を引かれる何かがあったわけではなく、単にリストの一番上だったからなんとなく記憶に残っていただけなのだが、 その“6番目の王子様”がこのダークブラウンの癖っ毛と藍色の瞳を持つ青年なのだとしぐれの記憶と結びついた 『わわ私こそ、王子様に、こんな…ごごごめんなさい…』 『いえ、本当に私は平気ですからどうか謝らないでください …えーと、そうだ、しぐれ様はティーセットを手にしてこんなところでいったい何をなさっているのですか?』 また謝罪合戦が始まることを危惧したらしい昴は話題を変えようとしぐれの手に持つティーセットに注目した 『私は…これをメイドさんたちの所へ返しに行こうと…』 『? …そう言った物は彼女たちが後で下げてくれるはずですが…』 きょとんとした顔で呟いた昴に悪気は一切無いのだろう ただ、生まれたときからそう言った環境で生きてきたと思われる昴との違いに改めて気づいたしぐれは、まさかそんなに不思議がられるとは思わず耳まで真っ赤になる 『そ、そうなんですけどっ、いつもとってもお世話になりっぱなしですし、今日は皆さんとってもお忙しいみたいですし、このくらいのことなら私にも出来ますし…っ …すす昴様は一体何をしていらっしゃるのでございますか…!』 話題を変えようと焦ってしまいおかしな敬語で話を振り益々慌ててしまったしぐれだが、昴はそこに触れることなくしぐれの疑問に答えた 『私は、広間の下見に…』 『下見?』 『はい、今日は王がずっと交渉を持ちかけていた翡翠の国の国王様が初めて我が国へ視察にいらっしゃいます 王もこの日のために前々からとても力を入れて準備を進めていたようで、きっと夜の舞踏会では私にも場を盛り上げるよう命じられるのではと… …大したことは出来ませんが、広間の装飾の配置も変わるでしょうから立ち回りの確認に下見へ』 『へぇ…』 5人の王子が国王からそれぞれ重要な役を任されていると教わったが、6番目のこの昴はこう言った社交の場を任されているのだろうか トップ5と教師から受け取ったリストとに明確な差を感じていたしぐれ 同じリスト側に分類されていた昴に根拠も無く親近感を抱いたが、トップ5に入っていなくてもあの5人のすぐ後、リストの一番上… 一番下の自分と比べて遙か上位に位置する人間なわけだから、この人もやっぱり凄い人なんだ…としぐれは一瞬でも自分と昴を無意識に一緒に考えてしまったことを恥じ、認識を改めた 『…でもまさか、そんなに凄い会だったなんて…』 『もしかしてご存知無かったですか?』 『え?ぁ、いえ、舞踏会のことは知っていたのですが…他国の王様をお迎えするだなんて… …私は来たばかりですから、お姫様らしい振る舞いなんてまだまだ全然出来ないし、そんな重要な場に呼んで頂けるなんてとっても光栄なんですけど、きちんと出来るどうか…』 『謙遜なさることは無いですよ 王が直々に連れていらしたと言うことは、しぐれ様は既に王に認められていると言う事です …私なんかよりも凄いことだと思います 今夜はきっと上手く行きますよ』 『そ、そんな…私なんて、本物の王子様やお姫様と比べたら…いえ、比べるのもおこがましいくらいです 王様もたまたまとおっしゃられてるし、本当に…全然凄くないんですよ?』 『…そうですか…』 『…?』 一瞬、昴の藍色の瞳が揺らいだ気がしたのはただの光の加減だろうか 『それでも、認められているのといないのとでは全く違いますよ』 『いえいえ!本当に、本当に…全然……だけど、本物の王子様に言われると凄く嬉しいです』 しぐれが微かに感じた違和感は、これでもかとしぐれを褒める昴によってすぐに消し飛んでしまった 幾ら王様が連れてきたと行っても過大評価し過ぎなのでは…と思いつつもわざとらしい感じの無い昴の話し方にしぐれは照れながらも素直に嬉しく思ってしまう 昴が社交の場に関わる命を受けるのも分かる気がした 『喜んで頂けて何よりです …引き留めてしまって申し訳ありませんでした、足下にお気をつけて』 『はい、失礼します』 今度は人にぶつからないようにしぐれは慎重に昴の前から立ち去った 昴もそんなしぐれの背中を見送った後に広間へと向かうべく進みながら、朝から不在である王のことを考える 今頃、王は翡翠の国王とともに国内を廻っている頃だろうか きっと今晩も誰かと剣を交えるよう命じられるはずだ どんな人間だろう…大切な場だ、失敗はできない 昴の脳内に先ほどのしぐれの何気ない言葉が蘇る ―…きちんと出来るどうか… しぐれ様はああおっしゃってはいたが、王が連れていらした方だ、きっと場に相応しい振る舞いをなさるはず それに引き替え自分は… ―…王は何故、私にこのような余興をするよう命じられるのですか 剣の腕ならば私より兄様たちの方がずっと… ―…別に~?なんか面白そうだと思ってさ~ ―…王様も“たまたま”とおっしゃられてるし、本当に…“全然凄くない”んですよ? 『……』 (…“やっぱり”…いや、“きっと”……) 昴はしぐれの言葉といつかの王との会話を重ね、過ぎった思いを振り払いながら 悲しそうに自分自身へ言い聞かせていた
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Heart
あとがき
しぐれから昴への繋ぎの回でした
時系列はしぐれが引き取られた後に①②の舞踏会(③→④→①→②)でした
“実はあのとき”とか“一方その頃”とかそう言う話が好きっていう趣味のためにややこしくなってますすみません
最後の昴のマキジとの会話の回想は①の序盤の回想の詳細なのですが、①読んでなくても『なんかそういうことがあったのね』と思って頂けたら大丈夫です
最後の昴の心の声は、しぐれの何気ない一言で
・“やっぱり”たまたま声がかかっただけの自分(昴)なんて王に認められている(凄い)とは全然言えないと弱気になる
・しぐれは王が連れてきたので本当にたまたまだけの人間じゃないはずだ
・王は『別に』と言ったが“(その後~それまでのマキジの様子(※①序盤の昴の回想)としぐれの存在から昴にこんなことをさせるのは)きっと(考えがあるはずだ)と自分なりの解釈(※①の昴の仮説)を言い聞かせる
そうやって一人でぐるぐるしながらの①→②で弱い部分を引きずり出されてめっちゃヘコむって言う説明がなければ何のこっちゃな話でした、本当にすみません
次は舞踏会後のお話です
Hearts
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後になっていたたまれなくなったもの、
確保(人に見せられないような状態)です
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