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ナザリオ。
ナザリオという男が自我をもって周りを見た時視界に入ったものは薄暗く湿り綺麗なものなんてない路地だった。 捨て子達の中でかろうじて生き延びたストリートチルドレンの中に居た痩せた子供の一人。 それがのちにマフィアの一員となったナザリオ・フォルトの始めだ。 子供だけで寄り集まり、時に増え、時に減り逃げ回って生きてきた。 大人は怒鳴って追い回すか、ごくまれにあたたかな食べ物をくれる生き物で自分たちとは違う者だった。 あちらとこちらの線引きは明らかで、交わることはなかった。 あの日までは。 ある日逃げ回って入り込んだ庭はとてつもなく広くて、美しいところだったのだろう。 己が酷く浮いている場所に居ることに気づいたのは一人の少年が目の前に立った時だった。 痩せて発育の悪い自分よりも大きな相手にとっさに逃げ出した。 放っておけばいいものを少年は追いかけてくる。 待つように呼びかけてくるのを無視してひたすら逃げ回った。 少年とその時は思っていたのだが、後日少女であったことが判明するその相手にとうとう追い込まれたナザリオは体を小さくして降りかかる災いから逃れようとする。 暴力というものはこちらが抵抗しなければ、いずれ相手が飽いて止むものだと知っていたからだ。 だがいくら待っても平手打ちも、蹴りも飛んでこない。 恐る恐る顔を上げれば物珍しそうにこちらを覗き込んでくる瞳と目があった。 赤い眼をした子供は言う。 『周りは大人ばかりで自分よりも小さいのを見たのは久しぶりだ』と。 何を言っているのだろうと目をぱちぱちとしているとようやく事態に気づいた大人たちに囲まれた。 伸びてきた大人たちの手に叩かれるとおびえたが、いくらか甲高い子供の声に遮られた。 目の前に居た子供が大人たちを阻止している。それどころが指示を出してこちらへの暴力を止めていた。 大人に指示を出す子供なんて初めて見たものだからひどく驚いた。 そんな自分を見て子供は笑った。 自分は都合の良い子供だったらしい。 暴力的でなく、躾ければ盗みも粗相もしない。 そしてその家のボスの子供の遊び相手として養われることになった。 粗末とはいえ今までいた場所とは格段にアップした寝床を与えられ、遊び相手として、時には勉強相手として扱われた。 それでもストリートチルドレン上がりということもあり雑な扱いを受けていた。 自分自身は気にもしなかったが子供にはだいぶ口うるさく言われたものだ。 そんな雑な扱いが一変したのは子供二人そろって誘拐された後だった。 誘拐犯はどちらが金になる相手か見定めるのも時間が惜しかったらしくまとめて部屋に放り込まれた。 追手はすぐにかかっていたらしく誘拐犯はあわただしく移動の準備を始めていた。 そして二人も連れていくのは手間がかかると殺すか金持ちの子供だけを連れていくと怒声が聞こえる。 「・・・」 二人視線を合わせた。 どちらが金持ちの子供だと言われてとっさについた嘘。 子供を示してこの子は使用人の子だと。 結果自分は連れ去られ子供は取り残された。 庇ったわけじゃない。 もしも本当のことを言って自分が取り残された時、子供の家の大人たちが恐ろしかったのだ。 浅はかな幼心が引き起こしたつたない嘘だった。 本当の事に気づいた誘拐犯にだいぶ殴られたがこれぐらいなら以前もあったことだった。 ただ、二度と戻れないあたたかなねぐらが恋しかった。 迎えなんて来ない。 元から捨てられていたストリートチルドレンの自分なんてあの家には不要なのだから。 だんだんと冷たくなる自分の痩せた体を抱いて意識を落とした。 次に目を覚ました時は世界は一変していた。 あちこちに包帯が巻かれて、折れたとおぼしき場所にはギプスがされている。 清潔で消毒液の香りがする場所が病院だという事を初めて知った。 看護師に優しくされて酷く戸惑った。 開いたドアから飛び込んできた子供が遠慮なく抱き付いてきて流石に痛いと漏らせが慌てて離された。 別れた後殺されずに済んだのかと考えていると開いたドアからは子供の家の大人たちが数人現れた。 怒られると身を固くした自分に、子供の父親である男が腕を伸ばした。 「ありがとう。お前のおかげで娘は助かった。ありがとう、お前は一人前の男だ」 そう言われながら抱きしめられた。 身代わりになって連れていかれたと子供が告げたおかげで、自分の扱いは変わり、一人の人間として扱われるようになった。 捨てられたモノから人になった瞬間だった。
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